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キャッシュレス決済の浸透をリアルタイムに追う

PayPayの認知経路と特徴

 生活者はこれらのキャッシュレス決済サービスをどのように知ったのか。特に認知率が大きく上昇したPayPayにフォーカスして認知経路を時系列で確認する(図表2)。

図表2 PayPayの認知経路 ※平均スコア上位10項目ベース:PayPay認知者/複数回答
図表2 PayPayの認知経路 ※平均スコア上位10項目
ベース:PayPay認知者/複数回答

 「テレビCM」、「テレビ番組」が高く推移しており、認知率が上昇中であった12月12日には「テレビ番組」が40%に達して「テレビCM」を上回った。その後、「テレビCM」が順調に伸び続けるのに対し、「テレビ番組」のスコアは徐々に下降し30%前後で推移している。

出来事に対しリニアに反応するサービス利用意向

 次に、キャッシュレス決済サービスの利用意向の推移を見ていく(図表3)。

図表3 キャッシュレス決済サービスの利用意向ベース:全体(1回の調査あたり416名)/複数回答
図表3 キャッシュレス決済サービスの利用意向
ベース:全体(1回の調査あたり416名)/複数回答

 PayPayのキャンペーンは、開始からわずか10日間という予想外の早さで還元金額が100億円に到達し終了を迎えたことも話題となった。キャンペーンが終了した12月13日の前後である12月10日〜14日、PayPayの利用意向の高さは1度目のピークを迎えている。この時期には、キャンペーンのインパクトや、あまりにも突然の終了などがマスメディアなどで取り上げられており、前掲の認知経路のチャートからもその効果が推察される。その後、利用意向は2019年1月9日〜11日にかけて再度上昇しており、この時期はキャンペーンのポイント付与のタイミングと重なる。一方、12月16日からのスコアの下降にも注目したい。このタイミングは、“クレジットカード不正利用”が報じられた後であり、ネガティブな反応が顕著に確認できる。

 では、PayPay以外のサービスではどうだろうか。12月21日の「楽天ペイ」の上昇が目立つ。この期間は、楽天市場の「大感謝祭」キャンペーンの最中であり、これに関連する動きがあったと推察される。GoogleTrendsで「楽天ペイ」のキーワード検索トレンドを確認したところ、当該期間の人気度がピーク値の100となっていた(※2019年1月24日時点)。

 また、12月17日の「LINE Pay」にも山が見られるが、これはPayPayと同等の20%のポイント還元を打ち出した「Payトク」キャンペーンがリリースされた後であった。 このように、サービスの利用意向は、徐々に累積する認知率とは異なり、関連サービスのリリースやキャンペーン、ニュースの話題性などに連動して、比較的タイムリーにスコアが上下することがわかった。

利用意向に男女差はあるのか?

 各サービスの利用意向に男女差はあるのだろうか。ここでは、「PayPay」「LINE Pay」「楽天ペイ」について特徴を紹介したい(図表4)。

図表4 男女別の利用意向(PayPay、LINE Pay、楽天ペイ)ベース:全体(1回の調査あたり416名)/複数回答
図表4 男女別の利用意向(PayPay、LINE Pay、楽天ペイ)
ベース:全体(1回の調査あたり416名)/複数回答

 「PayPay」と「楽天ペイ」は、12月中旬以降から男性のスコアが高い傾向が続いた。一方、「LINE Pay」では、期間当初は女性のスコアが高かったものの、12月中旬以降、男性が同等以上となる日付があった。あくまでもこの3サービスの範囲ではあるが、年末年始の一連のキャンペーンや報道によって利用意向が高まったのは、共通して女性よりも男性だった。

 認知率や利用意向の推移の背景を推測していくと、LINE Payと楽天ペイは、PayPayのキャンペーンに対応する形で手を打ち、利用意向の維持・向上につなげることができているようにも見える。

 年末年始にかけ、急激に光が当たったキャッシュレス決済サービスだが、2019年2月に「メルペイ」がサービスの提供を開始し、他にも「au PAY」「ゆうちょペイ」などの提供開始も予定されている。ともに事業母体が大きいサービスであるが、現在のところ今回の調査で追いかけたPayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」と同程度規模のキャンペーンが行われるかどうかはわかっていない。乱立するサービスが生活者からどのように受け止められ、どのように生き残りを図っていくのか、引き続き動向を注視したいと思う。

 また、今回採用したリアルタイム調査※1というスキームでは、これまでの定点調査よりも生活者の“気持ちの動き”を素早く捉え、「打ち手」をリアルタイムに検討できる可能性を感じた。この仕組みが浸透していくと、例えば自社ブランドが実施したプロモーション施策への反応をリアルタイムに確認し、ターゲティングセグメントへのネット広告出稿量の最適化を図る……といった使い方も現実味を帯びてくるだろう。

 世の中の反応を即時に捉えることが重要になる局面において、調査終了から間を置かずに結果を参照可能な仕組みがマーケティングリサーチ業界で浸透してきている。また、それらのサービスの多くが、「見やすい・わかりやすいUI」、「インタラクティブな操作性」、「使用環境を選ばないアクセス性の良さ」など、独自の強みを備えている。ゆくゆくは、リサーチそのものですら、事前の準備なく自動的に進み、必要なとき、必要な内容でデータを取り出し、加工し、アウトプットする……そんな時代が訪れるかもしれない。

■調査概要
調査主体:マクロミル・翔泳社(共同調査)
調査方法:インターネットリサーチ
調査対象:全国20歳~59歳の男女(マクロミルモニタ会員)
割付条件:平成27年国勢調査による性別×年代の人口動態割付/1回の調査あたり416サンプル、合計6,240サンプル
調査期間:2018年12月6日(木)~2019年1月11日(金)/2~3日に1度の頻度で全15回実施

・本文の数値は四捨五入した整数で表記しています。
・百分率表示は四捨五入の丸め計算を行っており、合計が100%とならない場合があります。

▼調査レポート
『キャッシュレス決済の浸透をリアルタイムに追う!2018年12月から1カ月をトラッキング』(HoNote)

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この記事の著者

マクロミル(マクロミル)

高品質・スピーディな市場調査を提供する、マーケティングリサーチのリーディングカンパニー。生活者のインサイト把握やデジタルマーケティング施策の広告効果測定など、マーケティング課題解決に向け最適なソリューションを提供。世界21カ国、50の拠点を展開し、唯一無二のグローバル・デジタル・リサーチ・カンパニーを目指す。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/03/25 15:00 https://markezine.jp/article/detail/30638

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