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花王廣澤氏が若手視点で聞く、これまでとこれからのマーケティング

マーケター、PRパーソンに必要なのは「コンテクスト」を読み取る力【花王廣澤氏×高広氏対談】


世の中を相手にPRしよう

廣澤:歴史的にPRの走りはプロパガンダだったとも言われており、世論を動かす、民衆の合意形成をするなど、大きなストーリーを作り、それにみんなで向かっていくような印象を持っている人が多いかもしれませんが、現代はそういった発想だけではまずいのかもしれません。

高広:海外と日本を比べると、海外のPR業界は「社会」を相手に仕事をしているように思います。一方日本の場合、「企業のメッセージをどのようにしてメディアに載せるか?」を考え活動しているケースが多い。だからいまだにテレビをはじめとしたメディアでの露出がどのくらいかが気になる。

 また「マーケティングPR」という言葉がありますが、それ自体本当は奇妙なんですよね。PRは、本来は「社会」との関係構築なので、社会的なトピックにすることが求められるわけですが、「マーケティングPR」というのは特定のマーケティング対象に対してのもの。「マーケティングPR」のPRは手法でしかなく、本来のPRが持つ思想とは違うのかなと。「広告だとテレビCM枠、マーケティングPRや戦略PRだとテレビ番組内での紹介」といった話がありますが、それは同じメディアの中で出方が違うだけの話であって、「それはPRなのか?」という疑問が生じます。

廣澤:PRは、社会との関係構築を意味する言葉なのに、PRと広告の垣根が曖昧になっていることが、大きな問題であるということですね。社会との関係構築という視点が抜け落ちてしまっていると、広告主側にいても感じます。

高広:「パブリックとは何か?」をイメージできているマーケターやPRパーソンは少ないのかもしれません。ある企業が社会とどのように向き合うかの話なのに、ある商品がどれだけ話題になるかの話に陥ってしまう。そうすると、本来的なPRがもたらすような長期的なアジェンダの設定ではなく、短期的なキャンペーンがPRに求められるというおかしなことになってしまう。

 また、「パブリックについて考える意識が希薄なのではないか?」という観点から見ると、パーソナルブランディングとしてnoteやブログ、SNSで発信する人が業界関係者にも増えていますが、個人の意見がパブリックの場に出ることに対する意識が足りない人もまだまだいる。結果、「個人としての発言です」と注釈をつけていても、その人が所属する会社も巻き込んで炎上する。個人の発言も企業の発信するコンテンツも公になることを前提としていないから、炎上してしまうんでしょう。

廣澤:広告・PR関係者は改めてパブリックとは何かということを、考えなければなりませんね。

高広:パブリックと社会は若干意味が異なるとはいえ、両方に対する感覚が薄いことが昨今の炎上などの問題につながっているように思います。私が提案している「コンテクスト・プランニング」も、必ずしもコンテクストを変えようとする手法ではありません。コンテクストを読み取って、そのコンテクストに合った商品やコミュニケーションを埋め込もうとする、それがなければコンテクストを作るというのが正しい進め方です。この認識が広告・PR関係者に広がると良いと思います。

廣澤:今回の対談をきっかけに、メディアとは、PRとは何かと再考することができました。多くの企業では、マーケティング、PR、メディアがそれぞれ独立した部門になっているケースが多いと思いますが、その結果セクショナリズムに犯され思考の枠組みが狭まってしまっているのではないでしょうか。若手の方は特にですが、立場や部門といった役割を越えて物事を俯瞰的に捉えることが重要なのでないかと考えます。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/04/19 17:14 https://markezine.jp/article/detail/30679

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