ターゲットにあわせてクリエイティブを改善
また、こうした計測手法は国境を越えたキャンペーンにも有効だ。たとえば、2019年1~2月に日本政府観光局が実施したキャンペーン「Enjoy my Japan」では、アンルーリー社の動画視聴質調査と動画配信ネットワークを活用したキャンペーンを米国、カナダ、英国、ドイツ、フランス、オーストラリアの6ヵ国で実施したという。このキャンペーンの目的は、「これまで日本に興味がなかった人に、動画を通して『日本に行きたい』と思わせること」。正に、インバウンド喚起である。
動画視聴時の表情を分析することで、各国において、動画のどのポイントで興味を示すかが可視化できる。このデータは、他のキャンペーンにおけるクリエイティブでも活かしていけるだろう。
疑問2:動画はいつ・どのように配信するのが効果的か?
次に、「動画はいつ・どのように配信するのが効果的か」という疑問について考えていきたい。この問いについては、デジタルメディアおよびリアルディスプレイを中心とした動画広告配信プラットフォームを展開しているCMerTV代表の五十嵐彰氏を取材した。五十嵐氏によると、動画配信については年々問い合わせが増えており、特に今年の年初に日経新聞で「5G」に関する記事が出てからはさらに勢いが増しているという。

五十嵐氏に、「動画はいつ・どのように配信するのが効果的か」という疑問をぶつけてみた。すると、「ユーザーがその情報を欲しがっているコンテクストに組み込み、モチベーションが高い時に配信することが一番」だという。たとえば同社では、美容室・ネイルサロン、病院、飲食店など、生活者が日常の生活シーンで接触する様々な場面に独自のタブレットを設置して動画を配信するサービスも展開している。そのうえで、美容室では化粧品に関する情報など、モチベーションにマッチした動画を流している。
考えてみると、同じ人に同じ化粧品の動画を流すのでも、通勤電車の中で見るか、街中のOOHで見るか、美容室のタブレットで見るかでは、まったく違う効果になる。美容室では美に対するモチベーションが上がり、美容に関する情報を受け入れる心理状態になっているため、そこで流れてくる化粧品の動画は非常に効果が高いとと言うことは容易に想像できるだろう。

また、マルチスクリーンでのキャンペーン展開も有効と言うことである。テレビ、スマートフォン、タブレットへの配信を組み合わせることで、特にブランディング領域で非常に高い効果を発揮できるというのだ。たとえばヘアケア商品で考えると、テレビでは新しい商品が出たことを認識してもらい、通勤電車では利用ベネフィット(スタイルが長持ち、髪がはねないなど)を知ってもらって、美容室ではその効果の根拠や詳細な使用方法などを伝えるといったコンテンツの出し分けを行うことにより、大きな効果を得ることができるのだ。