疑問3:「テレビはマスに認知、デジタルで刈り取り」は正しいのか?
では、最後に「『テレビはマスに認知、デジタルで刈り取り』は正しいのか?」の答えをTVISION INSIGHTS社の郡谷康士社長への取材から探ってみたいと思う。同社は、モニター家庭のテレビにカメラを設置し、AIを活用してデータの収集と分析を毎秒レベルで行っている。このデータ収集と分析はAI値(Attention Index/注視度)でCMはもちろん、番組自体も解析されるので、番組毎の視聴特性がわかるという。つまり、IoTとAIを活用することで、テレビもターゲティングメディアになる可能性があるということである。

従来のテレビではマスを対象にしており、F1、M3など大まかな性別・年齢のデモグラフィックを中心に大型のキャンペーンが行われてきた。この使い方は継続されてゆくであろうが、番組毎の視聴動向やアテンションが個人レベルでわかることにより、違う使い方も多く出てくるはずだ。これまで感覚値でしかわからなかった「広告効果」を可視化できるようになることで、広告主の投資機会、メディアの収益機会も増えていくだろう。
また海外では既に短い動画フォーマットの実験や実際の配信も始まっており、6秒CMの効果なども検証されているという。CM放映秒数が限られるテレビ局にとっては収益化のチャンスであり、アテンションスパンの短い若者に対するクリエイティブの開発という意味では、広告主が他のメディアでも活用できる効率の良いものになるので、両者がWin-Winになる可能性は高いと筆者は考えている。
緻密なキャンペーン設計が可能に
ここでも重要になるのはコンテクストである。テレビにおいても誰がどのように見ている番組で、どんな気分なのか、どのような情報を、誰がどのように届けると効果的で、それを見たらどのような変化が起こり、どのようなアクションを取る可能性があるのか? ということをしっかり捉えた上で、キャンペーンを設計することが重要だ。
従来は、「テレビはマスで認知をあげる、デジタルで刈り取り」といった単純な設計しかできなかったのが、今後は「ここ(リビング、通勤電車、美容室)にある、このスクリーン(テレビ、スマホ、タブレット)において、このターゲットは、こんな気分(コンテクスト)なので、このクリエイティブを当てて、このような変化(ブランド認知、購入意向向上、購買アクション)を起こしてもらおう」というような、精緻な設計を行うことが可能になってくるのだ。
2回にわたって動画のマーケティングに関するダイナミックな動きをレポートしてきたが、この業界はまだまだ多くの動きが出て来そうであるので、定期的に取り上げていきたい。