顧客が情報をもっている時代、購買体験をどう築くか
原嶋:本日は、ビームスでEC事業を統括されている矢嶋さんと、店舗のデジタル化を推進されている渡部さんにお話を聞いていきたいと思います。まず、御社が描く理想の購買体験について教えてください。リアル店舗・ECという購買チャネルがあるなか、アパレルだと最終的には店舗だよね、という企業も多い印象ですが、ビームスさんはいかがでしょうか?
矢嶋:当社は43年間リアル店舗を中心に展開してきており、ビームスのブランド体験は店頭にあると思っています。いかに店頭でお客様に体験をしてもらうかということを考え、ファッション雑誌や広告など、様々な方法でリアル店舗へ送客していました。インターネット登場後は、デジタルでブランドの価値を伝えて、店頭で購買体験をしてもらうという購買フローを描き、それぞれの最適化を進めています。ECはデジタル施策の中のひとつ、という立ち位置で考えています。
渡部:僕は店舗にいた経験もあり、店舗にはデジタルにはない、店舗ならではの魅力というものを感じています。ただ、今やお客様はスマートフォンを始めとした様々なツールを使い「情報をもっている時代」なので、それにあった対応を店舗側もしていくべきだと思っています。
ECと店舗どちらでということではなく、両方の体験をどうつなげていくかが重要なのですが、現状は店舗のほうの理解がまだ足りていない状態です。そこをどうボトムアップしてつなげていけるかというところを試行錯誤しています。
来店客のもっている情報にあわせた接客を
原嶋:店舗の理解が足りないというのは、どういうところで感じていらっしゃるんですか?
渡部:簡単に言うと、「お客様がどういった情報を得て来ているのか」というのを感じとる力がまだまだ足りていないと感じています。現状、お客様が情報をもっている/もっていないというのは可視化できていないため、来ていただいたお客様を見て、その場で考えて接客を行っています。
原嶋:将来的には来店客がデジタル上でどういったジャーニーをたどって来たかをわかるようにしたいということですか?
渡部:そうですね。ふらっと来店してくださったお客様のデータを可視化するのは不可能ですが、たとえば試着予約で来てくださったお客様が、どういった方であるかは可視化できるようにしたいと思っており、CRMの担当者と相談しています。
その方が来店までにどういった買い物をしてきたかが可視化できれば、「試着する服とあわせてこれをお薦めしよう」ということができるようになっていきますよね。