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動画広告の活用がもたらす価値に迫る(AD)

三井住友カードが「VeleT」で実現した、ミドルファネルへの最適なアプローチとは

 三井住友カードは、同社の興味関心を高めるべく、アルファアーキテクトが提供する動画広告ソリューション「VeleT(ベレット)」を活用。4種のHub動画によって「興味喚起」と「理解促進」をリフトさせることに成功した。本記事では、両社の取り組み内容から動画広告の活用で実践するべきポイントを探る。

比較検討フェーズに寄与する施策が必要に

MarkeZine編集部(以下、MZ):今回は、三井住友カードでマスおよびデジタル広告領域を担当する三井住友カードの原さんと、アルファアーキテクトの取締役で同社の動画広告ソリューション「VeleT」のプロダクトサイドの責任者である伊藤さんにお話をうかがいます。

左:三井住友カード株式会社 マーケティング本部 マーケティング統括部 グループマネージャー 原央介氏右:アルファアーキテクト株式会社 Video Consulting Div. Planning Unit 執行役員 伊藤展人氏
左:三井住友カード株式会社 マーケティング本部 マーケティング統括部 グループマネージャー 原 央介氏
右:アルファアーキテクト株式会社 Video Consulting Div. Planning Unit 取締役 伊藤 展人氏

 最初に、三井住友カードが抱えていた、動画マーケティングに関する課題を教えてください。

原:まず、課題の背景としてあるのが、国内で進むキャッシュレス化推進に関する動きです。経済産業省が策定した「キャッシュレス・ビジョン」では、現在20%弱のキャッシュレス決済比率を2025年までに40%にするという目標を掲げています。

 昨今ではQRコード決済などの新たなサービスが登場し、各決済事業者による様々なキャンペーンが行われています。これにより、キャッシュレス自体の注目度は高まっているものの、現金ユーザーがキャッシュレスの本来的価値を十分に理解するまでには至っていないというのが、我々の考えです。

 そこで我々が昨秋から展開しているのが「Have a good Cashless.」というキーメッセージを掲げた、キャッシュレスに関するコミュニケーションです。メインキャラクターに小栗旬さんを起用したテレビCMを制作して放映したところ、複数の広告賞を授賞することができました。

 この強力なクリエイティブもあり、購買ファネルの中の認知に関しては一定の効果を得られています。また、キャッシュレスに関する専用サイトを立ち上げ、SEO対策を行いオウンドメディアへの流入を促すことで、キャッシュレスへの理解を促進することもできています。

 ですが、理解を促した先の主力商品であるクレジットカードの申し込みまでには距離がありました。つまり、理解促進から比較検討のフェーズにつなげるコミュニケーションに対して、課題を抱えていたのです。

動画広告のPDCAをフルサポート

MZ:このミドルファネルへのアプローチに問題を抱える企業は多いように思うのですが、伊藤さんはどのように考えていますか。

伊藤:ミドルファネルへのアプローチが抜けてしまう企業様は多いと感じます。広告主の組織体制についてお話を聞くと、ほとんどの企業様では認知と獲得で担当部署や予算が分かれています。この傾向は大企業になればなるほど顕著です。フェーズごとに担当が分かれてしまっていることで、認知と獲得、それぞれの間をつなぐ施策が効果的にできていないのではないか、とも感じられます。

原:我々もそのような組織体制ではいけないと思い、 2018年10月からマス広告もデジタル広告もファネル全体を一気通貫で同じKGIとKPIで管理する体制に変更しました。このような体制で、全体最適のPDCAを回すようにしています。

MZ:今回ミドルファネルのアプローチを強化すべく「VeleT」を採用したと思いますが、それはなぜでしょうか。

原:アルファアーキテクト様であれば、企画から制作、配信、運用、効果測定までと動画広告のPDCAを回す上で必要な要素すべてを少数精鋭でサポートしてくれるからです。動画広告は打って終わり、アンケートをとって終わりとなりがちですが、定量的かつ定性的に分析して、良かったことと悪かったことをよりスピーディーに判断し、改善できると思いました。

伊藤:動画広告関連の企業でクリエイティブ制作から広告配信、効果検証までを一気通貫で支援している企業は少ないと思います。また、外部の調査会社に委託せずともアンケートによるユーザーへの定性的な調査や、定量軸ではビュースルーコンバージョンの計測やアトリビューション分析もできるので、配信後の結果もすぐわかります。

 制作から配信、効果検証までワンストップでサービスを提供していることで、PDCAサイクルのスピードとクリエイティブへのフィードバックの質を担保していることが私たちの強みです。

配信した4つのクリエイティブの特徴とは?

MZ:「VeleT」ではどのようなクリエイティブを配信したのでしょうか。

原:テレビCMで使ったクリエイティブをHero動画と位置づけ、その先の興味喚起、理解促進につなげる動画をHUB動画として次の4動画を制作しました。

1.時短編:20~30代男性をターゲットに、会計時の効率化を訴求

2.パパと娘編:30~50代男性をターゲットに、親子のコミュニケーションを訴求

3.安心買い物編:20~40代女性をターゲットに、使いすぎリスクへの安心感を訴求

4.かわいい財布編:20~40代女性をターゲットに、ファッション観点でのスリム化を訴求

MZ:4つのHub動画を配信したことで、どんな反響がありましたか。

伊藤:評価にあたっては、4つのHub動画とともにHero動画も配信して比較しました。興味喚起および理解推進を目的としたHub動画と認知を目的としたHero動画の間で、どれだけ見られるかと見た人の態度変容に変化があるかを確認するためです。

原:それぞれの動画ごとにアンケートを実施し、動画別および動画視聴/非視聴者で比較したところ、「キャッシュレスへの興味喚起」「三井住友カードへの興味喚起」「カード利用意欲」「サーチ喚起」のいずれでもHub動画がHero動画よりポジティブな結果になりました(図1)。

図1:Hub動画の定性効果
図1:興味・理解度のリフト調査
※2回実施、約3,000件ほどのサンプルより算出

 また、アトリビューション分析の結果も、初回接触の約7割がHero動画を起点としており、初回接触はHero動画がHub動画を上回る結果となりました。反面、最終接触ではHub動画の効率性がHero動画を大きく上回るという、狙い通りの結果を確認できました(図2)。

図2:Hub動画の定量効果
図2:ビューコンバージョンの接触ポイント別CPA
※総カウント数2,800件より算出

伊藤:原さんのお話の通り、ブランドとの接触起点になるのはHero動画ですが、実際の利用シーンに落とし込み、ライフスタイルへの提案や価値を訴求できる分、Hub動画のほうが利用意欲を促せることが定量的・定性的の両方で確認できたと考えています。

積極的な広告主の関与が成果を左右

MZ:今回の取り組みを進める上で、特に意識していたポイントはありますか。

伊藤:初回のHero動画の配信に対するユーザーの意識調査アンケート結果をもとに、ネガティブな意見の要素を洗い出し、その要素についてディスカッションしながらできるだけリアルなシーンを描き、視聴者が「自分ごと化」しやすい動画を作った点が良かったと思います。

原:演出をいかにリアルな行動に近づけるかは、大事にしていましたね。カードの出し方一つをとっても、見栄えよりもリアルであることを突き詰めました。でないと自分ごととして共感できないと思ったので、現場の撮影陣には強くお願いしました。

伊藤:通常、演出は私たちにおまかせいただくことが多いのですが、要望をはっきり伝えていただいたことで、クリエイティブの品質を向上できたと思います。Hero動画は「万人向けを良し」とする傾向がありますが、Hub動画では利用シーンや状況の具体的な設計と、配信するメディアのマッチングが非常に重要なので、そこに対して両社で徹底的にこだわることができたこその結果ではないでしょうか。

 原様をはじめとしたご担当者様の忌憚なきご意見ももちろんですが、当社の担当営業も長く三井住友カード様を担当させていただいているからこそのアイデアもあり、良い意味で意見を互いに出し合えたからこその結果だと考えております。

MZ:企画段階から広告主が主体的に関わることが重要ということですね。

原:ポジティブな結果が出たのは、Hero動画に使ったテレビCMの品質が一定水準を超えていたことも影響していると思います。広告主側もたかが動画と捉えず、一定のクオリティを求め、お客様が見てそこから何を感じ取ってもらうかを考え、やり取りをしないといけません。おまかせだと、最悪の場合はブランド毀損につながるリスクさえありますので。

お客様視点で一貫したメッセージを届ける

MZ:今回の結果を踏まえ、これからどのような動画マーケティングを展開していきたいですか。

原:最適な動画広告のプランニングを突き詰めて考えたいです。動画広告は、わずか数10秒の間に共感を得られるメッセージを盛り込むことができます。しかし、タイミングやコンテンツの内容などをきちんと設計しなければ、見てすらもらえません。

 また、最近は様々なプラットフォームで動画を見る機会も増えています。そのため、設計が甘いと埋もれてしまうリスクもあります。広告予算を無駄にしないためにも、常にお客様視点ですべてのタッチポイントにおいて一貫したメッセージを提供する必要があると思います。動画広告が最適な場面では、できるだけインタラクティブに、タイミング、ターゲット、内容がすべて最適な動画を届けていきたいです。

伊藤:三井住友カード様との取り組みに関しては、アトリビューション分析の範囲を広げ、動画が他の広告と比べてどのぐらい全体に寄与しているかを明確にしたいと考えています。

 それに加えて、クリエイティブの精度を高めることも検討しています。今回作った4パターンのHub動画の中でも効果には差がありました。正直な話をしてしまうと、当初目論んでいた効果、いわゆる「自分ごと化」にうまくつながっていなかったクリエイティブも明確になりました。

 こう言ったネガティブな面も含め、それぞれ分析して改善点も見えているので、より効果的なもの、ひいては視聴者にも楽しんで「自分ごと化」してもらえるような動画クリエイティブを企画・制作できればと考えています。

原:本来はどこでどんな広告を出してもすべてを網羅的に評価できることが理想ですが、残念ながら現状では実現できません。その意味では、パートナーであるアルファアーキテクト様が、良かったことだけでなく、うまくいかなかったことも含めてしっかりとフィードバックをしてくれたことに感謝しています。

伊藤:ブランドリフトの評価で危険なのは、数字だけで判断することです。特にYouTubeのような強制視聴モデルの場合、アンケートでポジティブかネガティブかを確認しないと、嫌がられているのにクリエイティブが受け入れられたと勘違いをすることもあり得ます。これから取り組む企業には、定量的な評価と定性的な評価の両方を確認することの重要性を理解してほしいと思います。

「VeleT」の詳細に関してはこちら
同ソリューションに関するお問い合わせは、アルファアーキテクト株式会社まで
担当:広報 藤坂 嘉乃
E-mail:support@a-a.email

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/03/31 16:24 https://markezine.jp/article/detail/31507