把握できなかった同伴者のデータも把握する方法とは
平地:WebサイトやチラシなどでJリーグチケットへ誘導するというだけでは、80%まで急激に増やせないと思うのですが、その他にも何か施策を行ったんですか。
遠藤:Jリーグチケット以外の方法でチケットを購入していた既存のお客様にも、Jリーグチケットを利用してもらうべく行ったのが1万人無料招待などの大規模な招待施策です。これらの招待チケットはJリーグチケットでないと受け取れないようにし、まずはお客様に1度Jリーグチケットを使っていただく取り組みをしました。これにより、抵抗なく移行してもらえたのではと思います。

具体的な施策を挙げると、2回観戦すると1回無料のチケットがもらえる「観戦スタンプラリー」というキャンペーンがあります。マッチデープログラムという冊子を試合時にお渡ししているのですが、それにスタンプラリーのカードを付けました。このキャンペーンで無料チケットを手に入れるためには、Jリーグチケットを利用する必要があります。
また、2018年には「プラス+1MATCH(プラスワンマッチ)」というキャンペーンを行いました。特定の3試合のうち、どれか1試合に来たらもう1試合が無料という内容です。入場いただく際にシリアルナンバーとQRコードの記載されたチラシをお渡しし、QRコードでJリーグチケットへと誘導。シリアルナンバーをJリーグチケットで入力するとチケットが取得できるというものでした。
これまで、2人で来場する場合はどちらか1人がチケットを2枚購入されるケースがほとんどでした。そのため、同伴者の方の情報がわからない状態になっていました。しかし先ほどのキャンペーンでは、シリアルナンバーを個人ごとに発行しているため、同伴者の方にもJリーグチケットを使っていただける上に、来場記録も把握できます。
平地:それは素晴らしいですね! 同伴者がどういった方か見えないのは他のチームも課題視していると思いますし、参考になります。
遠藤:これらのキャンペーンが功を奏し、店頭や会場で直接購入していたという方も、Jリーグチケットへと移行していただいています。JリーグチケットのUIとUXも好評で、一度利用していただいた方には、その次もリピートしていただけています。そして、利用者の皆様に、メルマガでキャンペーンの告知やより楽しく観戦いただける情報をお届けしています。
Jリーグチケットの利用につながる企画設計
平地:現在もJリーグチケットの会員比率を高める方向性で施策を行っているのでしょうか。
清水:クラブとして一番大事なKPIは、勝利につながるスタジアムを作り上げるために入場者数を増やすことです。その中間指標として、Jリーグチケットの利用率があります。マーケティング部の各グループがその認識で動いているので、入場者数を増やすための企画を行う際は、Jリーグチケットに登録してもらうことを踏まえて企画を立てています。
平地:各グループが上手く連携できているからこその取り組みですね。Jリーグチケットの購入率が80%というのは非常に高い数字だと思うのですが、他のクラブの購入率はどの程度なのでしょうか。
遠藤:平均は40~50%程度だと聞いています。
平地:他のチームでは「年配のファンが多いから、他のチケット購入方法から移行させるのが難しい」という声も聞くのですが、どうでしょうか。
遠藤:クラブによって適切な方法は異なると思います。我々もJリーグチケット以外の購買方法でも購入いただけるようにしています。ただ、年配層の方のスマホやネットの利用は増えていますし、現にグランパスでは年配層の方にもJリーグチケットをご利用いただけております。一度ご利用いただければ、便利だと思っていただけるのではないでしょうか。