共通言語としてのデータセットを整備
――現在、具体的にはデジタルマーケティングのチームはどのようにデータ活用を推進しているのでしょうか。
奥作:私がビジョンに入社した時には、データベースからデータを抜き取る方法が統一されていませんでした。その結果、ひとつのプロダクトの売り上げグラフの数値がチームによって異なり、議論がかみ合わず、無駄な作業も発生していましたね。
WEBマーケティング事業部 部長 奥作津司氏
――なるほど。最初にどこから手を付けたのでしょうか。
奥作:まずはデジタルマーケティングに携わる比重が相対的に高い、BtoCのグローバルWiFi事業から、データの整備に着手しました。
当社ではデータ活用のプラットフォームとして「Domo」を導入しているのですが、その中に共通で見るべきデータを統合したデータベースを作り、「確認したいときはこのデータベースを見てください」「必要な指標はこの中で可視化されています」と事業部の社員たちに伝えました。
もちろん自分なりに深掘りしたいなどの場合もあると思いますので、その時にはここからデータを取ってもらう形にすることで、抜き取り方が人によって違うという状況を改善しました。この作業により、事業部全体でかなりストレスが減ったかなと思います。
――その後、データの活用は順調に進んだのでしょうか。
奥作:そう簡単ではありませんでした(笑)。社内勉強会を開いて「Domo」の使い方を解説しても、その時は興味をもって聞いてくれるのですが、それぞれの仕事に戻るとなかなか活用してもらえない状況が続きました。
突破口になったのは、現場の課題意識に対してアプローチできたことです。社員たちも当時の分析環境がベストだとは思っておらず、たとえば対象のデータが増えすぎていて、Excelでは対応し切れなくなっているといった困りごとがありました。そうした課題をフックに、マーケティングのチームが、「Domo」ならできますよとやり方を示したことで、「こういうデータを見たいのですが、Domoの中にありますか?」といった他の課題に関する相談も一気に増えました。
四条:担当している業務に応じて、データへの視点や関心軸が違うのは当たり前なのですが、勉強会を始めたばかりのころは、それぞれの視点に合わせたレクチャーができていなかったのです。
他にも、ツールによって作られたグラフが資料に載せられていたことがきっかけで「こんなアウトプットがしたかった」「作り方を教えてほしい」などの声が出てきて、まずは「Domo」を見てみようという姿勢が生まれることもありました。
――具体的には、どの部門で盛んに活用されているのでしょうか。
奥作:初めは管理・企画側での活用が多かったのですが、今は現場で営業をしている社員も質問に来るようになっています。先日はちょうどコールセンター側からも使い方の問い合わせをもらっていて、少しずつ浸透してきている感じがします。
営業とマーケの視点のズレは、データを“即”可視化して解決
――目標をそろえ、同じデータを見られる環境が整備されたとして、他にはどんな問題が起こるのでしょうか。
四条:営業部門とマーケティング部門がデータを見る際の「視点のズレ」が起こらないように気を付けています。他の企業様とお話をしているときに、マーケ部門と営業部門が分断しているという話はたびたび聞きます。
私はオフラインの営業に携わった経験もあるのですが、オフラインでお客様に接して、カスタマージャーニーの起伏に触れている営業パーソンと、日々数字を見て分析を行っているマーケターは、価値観が相いれないところがあるのだと思います。
二つの部門が同じ方向を向くためには、双方が共通のデータで「満足度の高い顧客体験」を意識することが必要です。
――なるほど。もう少し具体的に教えていただけますか。
奥作:よくあるパターンなのですが、マーケティング部門は、プロモーションやキャンペーンを展開してリードを獲得することを目的としているため、リードの送客率などをCVポイントにしています。一方営業部門は、受注数がCVポイントになっていますよね。
極端な言い方ですが、この場合マーケターは「とにかくリードを集めることが重要で、売り上げは二の次」という考えに陥ってしまう可能性があります。しかし営業パーソンからすると、受注につながらないリードは要らない。両者にズレが生じるのは当然だと思います。
当社では「Domo」を通じて、マーケターが実施したプロモーションが、受注までつながった状態でその日のうちに可視化されるようにしています。するとマーケターは、開封率やクリック率などのKPIと同時に、リードを何件獲得でき、それがどのくらい売り上げにつながったかを指標として追うことができるようになるのです。
また、営業部門も受注だけではなく、キャンペーンに興味を持ったユーザーを見込み客と捉え、満足度の高い顧客体験を提供できるよう、マーケティング部門と共に日々ブレストしています。
