ウォルマート、GAP、Kroger……先進流通業との提携が加速
マイクロソフト自身の変革への取り組みや、クラウドを中核とした基盤の強みを認められ、近年同社では先進流通業とのパートナーシップが加速しているという。公開されている範囲でいえば、昨年夏にはウォルマート、次いでGAPと提携。また本年1月にはKrogerやWalgreensとの提携も発表している。
相次ぐ提携の裏には、どのような狙いがあるのだろうか。藤井氏は、「先進流通業は、パートナーシップを通じた、トランスフォーメーションの加速を目指していると考えます」と話す。
藤井氏は事例として、米国のスタートアップ企業Jetの取り組みを紹介した。Jetが創業した2014年当時、米国ではAmazon.com が浸透していたことから、多くのECビジネスは苦戦を強いられていた。そのような状況において、Jetでは、これまでにないユニークな顧客体験を提供することで勝負をしかけた。それが「最適価格保証」だ。
最適価格保証とは、たとえばユーザーが複数の製品を購入カゴに入れた際、ユーザーの受け取りロケーションや送料、個々の割引条件などから、最も価格が安くなる組み合わせを自動で算出し、リコメンドするという仕組みである。このような仕組み、言うは易く行うは難しで、実現には高度なシステムが必要となる。そもそも、ECサイトはキャンペーンなどにより大きくトラフィックが変わるなど、情報処理量に対するシステムの負荷が膨大なのだ。
Jetはアイクロソフトとの連携により、このシステムを極めて短期間に実現させた。その後、Jetはウォルマートに買収されることになる。
「これは、流通業のトランスフォーメーションの大きな方向性である『顧客への価値提供強化』の事例として良いものであると考えています。また、現在、ウォルマートのオンライン事業のトップは、Jetの創業者が務めています。つまり好調と評されるウォルマートのオンライン事業の裏にも、マイクロソフトのテクノロジーが動いているとお考えいただいて良いと思います」(藤井氏)
クラウド×デバイスで新たなソリューションも提供
またマイクロソフトは、新たなソリューションも提供している。それが「Microsoft HoloLens(マイクロソフト・ホロレンズ)」だ。Microsoft HoloLensは、MR(複合現実)技術により、現実空間のなかにコンピューティングをインプットし、現実世界とバーチャルを組み合わせて様々な体験ができるというものだ。
たとえば米国の住宅リフォームチェーンのロウズ・カンパニーは、このレンズを使い、壁紙を変えたり、新たな家具を置くことで部屋がどのようになるのか、実際の自宅で試すことができるというサービスをテストしている。
この取り組み、「買った家具が自宅に合わなかった」という体験不和が解消できるのはもちろんのこと、もうひとつ大きな意味があると藤井氏は話す。
「実は、レンズによって視線をトラッキングしています。どこを何秒間見たのかなどのデータが、その都度クラウドに蓄積されます。このデータを蓄積し、さらにAIで分析することで、さらに深く顧客のことを理解することができるのです」(藤井氏)
マイクロソフトのビジネス変革、そして流通業の最新事例が語られた本セッション。最後に藤井氏は、パートナー企業の重要性を次のように語り、場を締めた。
「テクノロジーを活用し、トランスフォーメーションしようという動きは、今後ますます加速していくでしょう。そして当社もAzureを中心に、その動きを支援していきます。とはいえ、当社は主に基盤を提供しているのであって、アプリケーションやインテグレーションサービスを提供しているわけではありません。そのため、志を共にしていただけるパートナー企業の存在が非常に重要なのです。今回イベントにご登壇いただいたアドインテ様をはじめ、多くのパートナー企業とともに、今後もお客様のトランスフォーメーションを支援してまいります」(藤井氏)