Experience Disruptor企業に見られる5つの特徴
Experience Disruptor企業に見られる特徴として、ハリガン氏が挙げたのは以下の5つ。
(1)Experience-Market Fit(体験と市場の適合性)
(2)Remove Friction(摩擦を取り除く)
(3)Personalize(パーソナライズ)
(4)Sell Through Your Customers(顧客を通して売る)
(5)Attack Your Business Model(既存のビジネスモデルを壊す)
それぞれ事例とともに見ていこう。1つ目は、「Experience-Market Fit(体験と市場の適合性)」だ。ハリガン氏が例として紹介したのは、オンライン中古車ディーラーとして成長する米Carvana(カーバナ)社。同社は、巨大な「車の自販機」を建てたことで話題となり、創業わずか5年で、全米最大のディーラーになった。昨年上場し、時価総額は120憶ドルとも言われている。
ハリガン氏は、彼らの成功の背景には「Experience-Market Fit(体験ベースの市場適合性)」を重視したサービス提供があると主張する。Carvanaは車の販売だけでなく、車購入に必要な手続き(税務処理や登録手続きなど)をトータルでサポートするサービスを提供している。ユーザーが欲しい車を伝えると、手続きを終えた車が希望の日時・場所に届く。その車を1週間運転して気に入らなければ、ユーザーはその車を返却することができる。その際、理由は聞かれない。
「彼らの商品は確かに優れていますが、それ以上に、商品価値を超える『体験』を提供しています。だからこそ、彼らは勝者となれたのです」(ハリガン氏)
ユーザーが感じる“わずらわしさ”をなくす
2つ目は、「Remove Friction(摩擦を取り除く)」だ。先述の車購入の例がわかりやすいが、ある製品・サービスを購入する際、非常に面倒な手続きが発生することがある。最近では、米カンファレンスなどを中心に、こうしたユーザーの煩わしさは「Friction(摩擦)」と表現され、課題視されている。ハリガン氏は「Experience Disruptor企業は、この摩擦が極めて少ない」と述べる。
ハリガン氏は、例としてソフトフェア製品を開発・提供するAtlassian(アトラシアン)社の取り組みを紹介した。同社CEOのジェイ・サイモン氏は、「ソフトウェアを購入する手続きはわずらわしすぎる」と感じていたという。そこで、同社のマーケティング部、営業部とともに契約までの流れを話し合った。そして、一つひとつ“摩擦”を取り除いていったという。その結果、今や同社では数百万ドルのソフトウェアを、営業担当者なしで(つまり、価格交渉などをなしにして)、電話ひとつで販売するスタイルを確立。時価総額320憶ドルの利益を出して成長している。
「あるソフトウェアを使ってみたいと思い問い合わせた後、営業担当者との交渉が何週間・何ヵ月もかかってしまうようでは、気持ちも離れてしまいますよね。ジェイは、交渉をなくすことで、“顧客との信頼関係”を維持したのです。これは、非常にスマートなやり方です」(ハリガン氏)