数字が証明した「Marketo Engage」の効果
「Marketo Engage」を中心とした施策強化の結果は顕著に表れた。まず、MAツール変更による社内体制強化により、施策実施速度が4倍に向上した。また、組織改革の影響で、MQL(Marketing Qualified Lead)の平均対応完了日数が8分の1に短縮された。さらに、MQLの質が向上したことで、案件化数が施策強化前と比較し40倍に増加。データ拡充でターゲティング精度が上がり、メールCTRが6.8%向上したという。
ただし、石井氏は「良いMAツールさえ導入すれば成果が上がることはありません。施策強化の成果はツールだけではなく、営業部とマーケティング部が組織横断的に一丸となって“売るため”の施策を考えて実行し、微調整をしながら泥臭く挑み続けたことから生まれたものです」と説明する。
加えて、短期的な成果だけに固執するのではなく、中長期的にミッションを達成するための合意形成をしたこと。さらに、組織ごとのミッションを理解・共有し合ったことも要因にあるという。
「Marketo Engage」導入前には課題が山積みに
また「デジタルマーケティングを成功させるためには、オフラインの改革も必要だ」と、石井氏は指摘する。
「Marketo Engage」を導入する以前、さくらインターネットではMQLの優先順位が低く、対応率が悪いという課題を抱えていた。以前のMAツールではスコアリングして、営業にホットリードを渡してはいたものの、アプローチまで時間が掛かったり、そのまま放置され続けたりしたことがあった。
また、システム上の課題では、新たな施策のたびにカスタマイズの依頼が必要で、実装までのリードタイムが長かったり、自社のビジネスや商習慣を伝えきれず、開発期間の長さに対して実装した機能の難易度や効果が比例しなかったりすることもあったという。
さらに、組織上の課題として、営業部は短期的な売上実績を求めているため、中長期的なナーチャリングを目的としたMAは過小評価されていた。石井氏は、「そもそもMAは必要ないのではという意見もあった」と振り返る。
「しかし会社が継続的に成長していくためには、ナーチャリングが不可欠です。ナーチャリングを軽視して短期的な売上を上げたとしても、その売上の源泉となる新規顧客は年々獲得しにくくなっています。だからこそ、認知を獲得した後の継続的な発信やナーチャリングに注力し、見込み顧客がサービスを検討する際に検討の土俵に上げてもらう必要があると感じていました」(石井氏)