CVRの改善を実現する、特徴に応じた1to1コミュニケーション
JTBのデータドリブン戦略の要となる組織 「データサイエンスセントラル」(前回記事はこちら) は、基盤~分析~施策までを範疇としています。施策の成功指標として様々な評価指標を持っていますが、単純にCVRベースで見たときは、150%以上改善することを、ひとつの目安としています。
従来の1.5倍の効果が上がれば、“仮説としてのセグメントが実在”し、“それに応じてコミュニケーションを改善できたと言える”、と考え設定しているものです。これらは、データドリブン、マーケットインの発想のもと、お客様が旅行へ出かける理由や動機といった、文脈(コンテクスト)を紐解き、特徴に応じた1to1のコミュニケーションを行っている成果です。では、そのためにどのようなデータ基盤が必要になるのでしょうか。
第2回は 「統合顧客データ基盤(プライベートDMP)」 の設計について解説します。
施策から逆算するJTBのプライベートDMP
この連載をお読みになっている方のなかには、まさに自社のプライベートDMP(※)構築を検討されている方もいるかもしれません。その際に必ず直面するのは「何から手をつければいいのか?」という点だと思います。
そこで、今回はJTBのプライベートDMPの変遷をVersion1.0→2.0→3.0→4.0の順番で紹介し、どのような優先順位で設計してきたかをお話ししたいと思います。キーワードは「施策側から逆算する」ことです。
※このような統合顧客データ基盤は、グローバルでCDP(Customer Data Platform)と呼ばれています。日本においてはまだ「プライベートDMP」の呼称が多く残っているため、本連載ではそれに準じることとします。
プライベートDMPの全体構成は、「データ統合」と「データ活用」に大別することができます。(下図左から右へ) データ統合では、JTBの販売データ、外部データ、Webのログデータをつなげてためる。そして統合したデータから、顧客の購買動機や旅行目的を分析し、得られた知見を施策へ活用していきます。
一般的にプライベートDMPというと、図中央にあるDMP単体を指します。そのため製品選定から手をつけてしまいがちです。しかし私たちは、データソースや、施策を実行するMAといったアプリケーションも含めたエコシステム全体をプライベートDMPと捉えています。