事業をデータドリブンに変革するためには、どういった考え方や組織が必要になるのでしょうか。本連載では、体制づくりに悩む企業の担当者に向けて、JTB Web販売部戦略担当部長の福田晃仁氏が自らの経験をもとに解説していきます。最終回となる第4回では組織変革の難しさとそれを乗り越えるために新組織に必要な要素、今立ち返るべきマーケティングの本質を解説します。
組織変革はなぜ難しいのか
これまでの連載で紹介してきたとおり、JTB Web販売部でデータサイエンスセントラルを立ち上げてから、我々は様々な取り組みを行ってきました。
データの向こう側には人の心がある データドリブン戦略に舵を切ったJTBの挑戦
施策から逆算する JTBのプライベートDMP設計
セグメントを「なに」で切るか? 顧客構造を解明する分析とは
- 1to1コミュニケーションを実行するための顧客データ統合基盤の整備
- “データの向こう側”を探るための探索型分析
- クロスチャネルのエグゼキューションの始動
データサイエンスセントラルが変化のハブとして機能し始めているものの、会社全体としてみれば依然として改革の真っただ中にあります。今回は、現在進行中の変革の最中でありますが、組織変革が極めて難しい理由と、難しい中での打ち手を考察していきます。
新しい価値観の象徴としてのデータサイエンスセントラル
データサイエンスセントラルは労務管理上の体制区分とは別に作ったコンセプチュアルな組織です。数名からスタートし、小さく動き、次々と実績を積み重ね、領域を広げてきた結果、今の規模、体制になっています。
そこには、大量の知見の投入と、随所に工夫をほどこしてきているのですが、最も重要なことは、新しい価値観を伝達することでした。それは、新しい概念を布教するとともに、リーダーを育成し自律性を持つ形にまで体制化することです。
社内外で講習を開き、選出メンバーを高度に育成し、パートナーとメンバーをもって体制化する。これを三つのユニットに対して行ってきました。
とはいえ、自分たちでも探り探りでした。業界に前例がないうえ、言語化すらされていません。さらに、新しい価値は、概念はわかるものの、施策レベルにおいてこれまでの価値で計るとどうしても合理性が低く見えるため、どうしても既存の価値観に引っ張られてしまう。
データサイエンスセントラルは既存の価値観を変化させていく役割を担っていますが、既存のKPIに縛られて施策の移行が大幅に遅延することがありました。
一方で、変革を進めるためには、従来の事業に適合した組織を転換し、新しい業務を推進できる組織に変えていかなくてはなりません。しかし実際に変化をさせるのは、非常に難しいことです。メンバー、リーダーにそれぞれ「変革の意思」があるにもかかわらず、なぜ難しいのでしょうか。
組織の維持構造
社内に「変えたい、変わりたい」という気運が非常に高まっていても組織が変われないのはなぜなのでしょう?
ある程度の規模の組織体には、構造的な維持バイアスが生まれる、といわれています。それは一般的に、次のようなモデルで説明されます。
具体的に、どういう組織だと事業改革が進みにくいのでしょうか。過去の成功体験のもと、固定化された業務を行うための組織が構築されている場合が挙げられます。大きな組織体であればあるほど、また、恒常的なアウトカム評価があればあるほどそれは顕著です。
このような組織における強みは、平準化されたサービスを安定して提供できることです。
しかし、上記のような維持構造に陥った企業は、ビジネスパーソンとして社内でしか通用しない人材を量産したり、新規採用が立ち行かなくなったり、リーダーに知見がたまらないためにリーダーシップがとれないなどの、問題を引き起こします。
あるいは、極度に平準化されることの副産物として規則主義を生み出し、内向的な会社文化を生み出してしまうというネガティブな側面もあります。
取り繕うわけではありませんが、これは安定稼働にとって適合的な仕組みです。しかし、こういった組織構造のまま変化の早いインターネットに適応しようとすると構造的な摩擦があちこちで生まれてしまいます。なぜなら現状維持の強い力が働いているからです。
摩擦の一つの例として、改革推進体制における、スペシャリストと、そうではない現行社員のジレンマが挙げられます。
専門性がない現行社員で変革を推進すれば内部調整はうまく行くが、改革に時代が変わってしまうほどの膨大な時間がかかる。一方で専門家はスピードに勝るが、個別最適に陥りがちで、事情論より改善策を優先することからハレーションを引き起こします。
そして、両方をやってみるわけにはいかないので、客観的にスピードの優劣を比べることはできませんが、一つ言えることは、専門家が求める理想のスピードと、ハレーションを最小限に抑えながら会社が持ちこたえられる残された時間とのバランスに従う必要があるということです。
どちらを優先するかは、国民性や社風による部分が大きいと思われますが、非常に微妙なバランスの中で専門性の導入と内部調整をし続ける、という至難の道がひかれることになります。
会員登録無料すると、続きをお読みいただけます
新規会員登録無料のご案内
- ・全ての過去記事が閲覧できます
※プレミアム記事(有料)は除く - ・会員限定メルマガを受信できます
- ・翔泳社の本が買える!500円分のポイントをプレゼント
この記事は参考になりましたか?
- 関連リンク
- JTBが挑むデータドリブン戦略 立ち上げから運用まで連載記事一覧
-
- 変わりたいのに、変われない 組織変革の障壁と打ち手
- セグメントを「なに」で切るか? 顧客構造を解明する分析とは
- 施策から逆算する JTBのプライベートDMP設計
- この記事の著者
-
福田 晃仁(フクダ アキヒト)
株式会社 学研ホールディングス CMO
株式会社 学研エデュケーショナル 取締役 / 株式会社 学研プラス 取締役 /
株式会社 学研教育みらい 取締役 / 株式会社 地球の歩き方 取締役総合代理店 / ITベンダー / 事業会社のキャリアを持ち、一貫してマーケティングとTechの両面によ...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
