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ラクスル×GOに聞く、テレビCMの民主化に両社が乗り出す理由

 2019年9月、ラクスルとThe Breakthrough Company GO(以下、GO)は提携し、テレビCMを活用したスタートアップの成長を支援するマーケティングサービス「はじめてのTVCMプラン」「CMO代行プラン」の提供を開始した。本記事では、ラクスルのCMOの田部正樹氏、GOのクリエイティブディレクター兼コピーライターの鶴見至善氏に提供の背景から、サービスの内容、特徴について話を聞き、同サービスがマーケターにもたらすメリットを探った。

企業変革を支援するGOとテレビCMで事業を約20倍にしたラクスル

MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、両社の展開しているビジネスとご自身の役割について紹介いただけますか。

左:ラクスル株式会社 CMO 田部 正樹氏 The Breakthrough Company GO クリエイティブディレクター/コピーライター 鶴見 至善氏
左:ラクスル 取締役 CMO 田部 正樹氏
The Breakthrough Company GO クリエイティブディレクター/コピーライター 鶴見 至善(いたる)氏

鶴見:我々GOは、クリエイティブを軸に企業の変革をサポートしています。メンバーには大手広告代理店出身でクリエイティブやPR領域に強い人たちが集まっているので、それを活かし企業が持つ課題を打ち破る方法を提供しています。

 私はその中でクリエイティブディレクター兼コピーライターとして、戦略立案からコミュニケーションデザインまで担当しています。

田部:ラクスルは元々ネット印刷のスタートアップで、私自身は入社以降一貫してマーケティングを統括しています。2014年から2019年までの5年で50億を超えるマーケティング投資を行い、売り上げを約20倍に成長させてきました。

 2018年には、特に注力してきたテレビCMを主としたマーケティング戦略をノウハウ化し、企業のテレビCMの制作・放映サービスを立ち上げ、現在はその責任者も兼任しています。

両社の強みが最大限活かされる提携に

MZ:今回両社は提携して、テレビCMの制作から出稿を支援する「はじめてのTVCMプラン」とマーケティング戦略全体をプロデュースする「CMO代行プラン」の提供を開始されましたね。なぜ両社が提携に至ったのか教えてください。

田部:テレビCMの制作・放映サービスにおける私たちの強みは、テレビCMの効果を可視化し改善するというPDCAサイクルを回すことで自らの事業を成長させてきた実績と、その中で培われたノウハウにあります。これまでも、テレビCMをネット広告と同じ感覚で運用できるよう、ロジカルに数字を見ながら効果を出してきました。

 その一方で、課題としていたのがクリエイティブの企画・制作でした。そこで、今回の提携でクリエイティブに強いGOと提携することで、より効果の高いテレビCMの制作・出稿が可能になると考えました。

鶴見:代表の三浦はGOの仕事の心得として、「おもしろくなければ仕事ではない」とよく言っているのですが、それはおもしろい仕事しかやらないというワガママな話ではなくて、アウトプットがおもしろくなければ結局、企業の求める成果につながらないということを指しています。クリエイティブに話題性やエンタメ性を持たせるのもそのためです。

 そして今回、クリエイティブに強みを持つ我々とテレビCMのPDCAサイクルを回せるラクスルが提携することで、テレビCMを通じて、よりビジネス成果を出すことにフォーカスできるのではないかと考え、提携に至りました。

 また、GOでは必ずクリエイターが決裁者と直接対話をして経営課題を発見し、事業の価値や戦略をクリエイターが責任を持ってアウトプットに落とし込むスタイルを取っています。今回の提携でもそのスタイルで対応できるので、両社の強みを活かしたサービス展開ができると考えたのも理由の1つです。

MZ:今回の両サービスはどのような企業向けのサービスになっているのでしょうか。

田部:基本的にはスタートアップ企業に向けたサービス内容となっています。スタートアップの場合、カテゴリーすら存在しないところから事業を立ち上げているケースも多く、世の人がその価値に気づいていないことも少なくありません。また、企業もどのような価値を打ち出していけば良いのかわからないということもあります。

 そのような状況であっても、GOとラクスルが手を組みその価値を見出すところから支援することで、ハードルが高いと感じてしまうテレビCMにも積極的にチャレンジできる環境を実現したいと考えています。

ビジネス成果につながるテレビCM、どう実現する?

MZ:では、「はじめてのTVCMプラン」と「CMO代行プラン」の具体的なサービス内容を紹介いただけますか。

田部:「はじめてのTVCMプラン」はその名の通り、はじめてテレビCMを出稿する企業向けのプランで、制作からメディアプランニングまでをサポートします。どういう文脈で知られるのが1番良いかにフォーカスしたクリエイティブを制作し、出稿もスモールスタートで着実に拡大していく運用で進めます。

 「テレビCMをやってみたいけどできていない」と思っている人でも手が届きやすく、かつビジネス成果につながりやすいサービス設計を目指しています。

はじめてのTVCMプラン
はじめてのTVCMプラン

田部:一方、「CMO代行プラン」はテレビCM制作の前段階であるCI(Corporate Identity)やロゴ、企業の社会的価値やコンセプトなど、通常広告主が代理店にブリーフィングする要素から一緒に考え、テレビCMのクリエイティブに落とし込んでいきます。また、WebやPRなども含めてどういったポートフォリオでマーケティングしていけばいいのかも含めて代行するパッケージになっています。

CMO代行プラン
CMO代行プラン

MZ:CMO代行プランの場合はマーケティング戦略全体を設計していくことになると思うのですが、場合によってはテレビCMをやらないこともあるのでしょうか。

鶴見:もちろんあります。まずはどちらのプランがベストかも含め、最初のコンサルテーションやミーティングをしていきます。テレビCMを打ちたいと考えられている方でも、僕らから見ると価値が固まっていなかったり、サービスの供給部分が盤石ではなかったりする場合もあるので、そもそもテレビCMを打つべきなのかも含め議論します。

MZ:両サービスでは、どのような形で支援を進めていくのでしょうか。

田部:まずはラクスルから私と、GOの代表の三浦か、プロデューサーがお話を伺いに参ります。その上で企業やサービスの規模・課題感に合った提案をさせていただきます。一般的には営業担当が要件を伺って、一度持ち帰ってチームを作ってご提案、というのが広告業界では一般的ですが、私とGOのプロデューサーが直接お伺いして、その場で伝えるべき価値やクリエイティブの方向性などを共有することができるので、非常にスピーディーかつ精度の高い提案ができます。

鶴見:代表でありながら自身もクリエイティブディレクターである三浦が自ら要件を聞き、その上でGOのクリエイターの中から最適なメンバーをアサインするというのは、非常に新しいと思います。

建設的なテレビCM活用が実現

MZ:その他に、両サービスの特徴だと言える点はありますか。

田部:テレビ CMで実現したいのは、「イメージ向上・認知獲得」「投資に見合ったビジネスインパクトが中長期的に得られる」などだと思いますが、そのためには継続して効果を上げることがとても重要になります。

 そして、継続して成果を上げるために我々から提供できることは大きく2つあると思っています。1つは会社のサービスが選ばれる理由を明確にし、それをクリエイティブに正しく反映できること。もう1つは、そのクリエイティブを誰にどう届けるのか、効果があったのかを可視化できることです。

 これまで、この2つは分断されてサービス提供されているケースがほとんどだったのですが、今回の両サービスはまとめて提供できるのが特徴だと思っています。

鶴見:私は両サービスが、テレビCMの役割を見直す可能性を秘めていると思っています。これまでテレビCMは予算が潤沢にある大企業向けのもので、主な効果として求められるのは「イメージ向上・認知獲得」でした。

 しかし、今回のようにPDCAサイクルを回すのに必要な要素がすべてパッケージ化されていると、テレビCMを数パターン作って出稿し、どのメッセージがマーケットに響くのかを検証するといった、新しい使い方ができます。

 テレビCMの世界でそれが進むと、これまでクリエイティブディレクターがやっていたような、当たるクリエイティブを経験と勘で作り投資するのではなく、建設的なテレビCMの活用が実現すると考えています。

サービス開始から1ヵ月、現在の反響は?

MZ:提供開始から約1ヵ月が経ちますが、導入状況や業界内での反響はいかがでしょうか。

田部:お問い合わせはすでに数十件は頂いている状況です。企業によっては早速、要件を整理しクリエイティブやブランドコンセプトについてコンサルティングを進めています。

鶴見:僕はバックグラウンドが広告代理店なので、そういう方々から大きな反響がありました。ただ、今回の提携で我々は既存の広告代理店の仕組みを否定したり、破壊したりしたいわけではありません。テレビCM制作のハードルを下げ、使い方の可能性を広げることでより多くの企業が取り入れやすくすること、すなわちこれまでの広告会社が築き上げてきたテレビCMの経済圏をより拡大することを目指しています。

田部:昨今、ネット広告が著しい成長を見せていますが、やはりリーチを取るならテレビCMの活用はこと日本においては有効です。現に、近年急成長しているスタートアップもテレビCMに投資をしています。

 我々も含め、上手くテレビCMを活用して企業・事業を成長させることができたファクトもある中で、より多くの企業がテレビCMを活用できるようにすることが広告業界のため、ひいては日本の産業全体にとっても良いことなのではと思っています。

テレビCM活用の民主化を目指す

MZ:最後に、今回の提携と両サービスの提供を通じて、広告・マーケティング業界にどのような変化を起こしたいか、意気込みを聞かせてください。

田部:今回の両サービスは、選ばれる理由を一緒に作り、テレビCMの役割や効果を見極め、企業・事業の成長に少しでも貢献することが目的になっています。

 これだけ情報が飽和している社会だと、良いサービスであるにもかかわらず知られずに埋もれていくケースも残念ながら出てきてしまう。そういった企業が出ないよう、適切にサービスの良さが伝わる状態を作っていくことが重要だと考えています。

 また、テレビCMに関するプランニングやクリエイティブに関するノウハウを持っている企業・人材は限られています。そのノウハウを我々が広く伝えていくことで、テレビCMを活用したマーケティングが民主化されていき、広告業界の成長にもつながるようなサービスにしていきたいです。

MZ:鶴見さんはいかがでしょうか。

鶴見:テレビCMは企業の変革や成長を急速に推し進める上で非常に重要な武器で、大きな決断のいる投資でもあります。そこに対し、今回の提携で後押しできるのは、GOとして意義のあることだと考えています。

 また、テレビCM自体が広告業界・作り手側からして閉塞感を抱く状態が続いていると思っているので、今回の提携を通じて新しいCMの使い方の提案、役割の再定義がしたいです。そうすることで、クリエイター側も今までとは違った発想や貢献の仕方ができるようになるはず。そして、業界にある閉塞感が少しでも緩和できるような取り組みになればと感じています。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/11/07 10:00 https://markezine.jp/article/detail/32253