「バイヤー・ペルソナ」と「バイヤーズ・ジャーニー」
BtoBビジネスにおけるコンテンツマーケティングのファーストステップとして、「Buyer Personas」の著者Adele Revella氏がContent Marketing World 2019のカンファレンス内で行ったセッション「Buyer Personas 2.0 - How Sales and Marketing Can Generate Demand That Converts」で語った「バイヤー・ペルソナ」や「バイヤーズ・ジャーニー」という考え方を紹介します。
Revella氏はBtoBビジネスのコンテンツマーケティングで、まず「バイヤーの期待や不安は何か?」「競合と自社の何を比較しているのか?」「購買意思決定までの社内フローはどうなっているか?」など、Buying Insight(購買インサイト)を把握することが重要と説いています。
そして、このインサイトの言語化に有効なのが「バイヤー・ペルソナ」の設定や「バイヤーズ・ジャーニー」を把握する手法です。
「バイヤー・ペルソナ」を設定する
一般にペルソナとは、年齢や性別、居住場所などの属性や、趣味・余暇の過ごし方などの嗜好からユーザーをモデル化することを指しますが、BtoBコンテンツマーケティングで必要な「バイヤー・ペルソナ」は、それとはまったく異なります。属性や嗜好などのプロファイル情報では、バイヤーがどのように購買を意思決定するのかを窺い知ることができず、あまり価値がないのです。
「バイヤー・ペルソナ」とは、どのように購買を意思決定するのか、意思決定までの経緯・ストーリーをパターン化し、モデル化するもの。具体的には、下記のような観点でバイヤー・ペルソナを設定します。
●購買先の企業や、購入する製品・サービスのどんな点を重視するか?
●自社の製品・サービスと競合を比較して、競合のほうが優れているとバイヤーが感じる部分はどこか?
●製品・サービスの導入に不安を感じているとすれば、それは何か? その不安払拭にはどんな情報が必要か?
「バイヤー・ペルソナ」を設定する利点は、BtoBコンテンツマーケティングの戦略や施策の方向性が明確になること。同時に購買担当者のインサイトを理解することで、安易な価格競争に巻き込まれることも減るでしょう。購買意思決定要素は価格だけでなく、意思決定に何が影響するか(たとえば、製品の耐久性や購入後のサポートなど)を把握し、それを自社の製品・サービスの強みとして顧客に訴求できるからです。
「バイヤーズ・ジャーニー」を把握する
BtoBビジネスでは顧客が購買の意思決定を行うまでに、以下の4つのフェーズがあると考えられます。この各フェーズで、顧客(バイヤー)が具体的に何を考え、どんな行動をするかを明らかにすることが「バイヤーズ・ジャーニー」の把握です。
1. Awareness:いつ、どんな時に製品・サービスの必要性を認識したか?
2. Research:どのように、他にどんな製品・サービスを比較検討したのか?
3. Evaluation:複数の製品・サービス候補をどんな観点で評価したのか?
4. Purchase:購買意思決定に対する社内からの信頼・承認をどのように得たのか?
自社の顧客は、どのような競合製品・サービスと比較し、どのような観点で、どの程度の時間をかけて検討・評価し、どのような社内フローで最終意思決定を行うのか。これらを把握できれば、自然とマーケティング施策の中で提供すべき情報・コンテンツ内容が決まってくるはずです。
BtoBコンテンツマーケターこそ、顧客に直接インタビューしよう
もちろん営業組織からのフィードバックや営業担当者へのヒアリングから、顧客について、また「バイヤー・ペルソナ」や「バイヤーズ・ジャーニー」を理解できる面もありますが、Revella氏は「BtoBマーケターこそ、顧客に直接会い、インタビューするべき」と言います。営業担当者から得られる情報は、顧客が営業と接触した以降のものが中心で、顧客が営業と接触する前に行った情報収集や他社製品・サービスの評価に関連する情報は得ることが困難だからです。また営業担当者の情報は特定顧客の事例がバイアスとなる内容も多く、広く顧客の購買インサイトを把握するには不向きな可能性もあります。
できれば、より意思決定に時間を要した顧客にインタビューするのがおすすめで、購買検討期間が長いほど、より多くのインサイトが得られる可能性が高まります。
以上、今回紹介したのはBtoBコンテンツマーケティングの基礎で、マーケティング戦略の立案前に理解しておくべき事項です。「バイヤー・ペルソナ」や「バイヤーズ・ジャーニー」が不明瞭なまま、とりあえずコンテンツマーケティングに取り組んでも、効果的なコピーを書けない、質の高いリード・問い合わせが入らないなど、得られる成果は少ない可能性が高いのです。
日本でも今後、アメリカと同様に外勤営業からインサイドセールスへのシフトが進むと、BtoBコンテンツマーケティングの重要性は高まると思われます。その際、アメリカの成功事例から学ぶ点は非常に多いでしょうし、また本稿で紹介した購買インサイトの把握こそがBtoBコンテンツマーケティングの成功の鍵と考えられます。