サブスクの体験価値が、業界を巻き込みうねりを生んだ
井原:リアルでの展開についてもう1つ紹介すると、Spotifyでは「音楽を発見する」という価値を最大限生かすために、注目の新人アーティストたちをプレイリストとライブイベントでプッシュする「Early Noise」というイベントも定期的に行っています。
実はあいみょんさんは、2017年の選出アーティストなんです。アーティストとリスナーとの接点を増やし、ファン基盤を形成することにもつながっています
西井:ストリーミングでファンの基盤を作っていく、新しいプロモーションですね。CDが売れない時代と言われますが、生活者は音楽を聞かなくなったわけではありません。ストリーミングであれば、CDが廃盤になっている過去の曲もセールスにつながりますし、音楽業界のマーケティングアプローチに変化が生じていると感じます。
井原:加えて、Spotifyアプリ内のアーティストページから、イープラスのサイトでライブチケットを購入できるシステムもスタートしました。Spotifyで発見したアーティストのライブに足を運んでその世界観を感じ、永続的なファンになってくださるユーザーを、もっと増やしたいと考えています。
本質は“新しい暮らしの提案”

西井:最後に、これからの取り組みを教えてください。
井原:最も重視しているのは、ユーザーの利用頻度を高めていくことです。特にビッグアーティストのサブスクリプションが解禁されたときは、休眠ユーザーが復活する傾向にあります。それに合わせてリマインドをするなどの方法で、利用を定着させたいです。
西井:サブスクリプションやストリーミングについて話をすると、「使い放題」「この金額で何万曲聴ける」といったスペックに目を向けられてしまうことが多い。でもサブスクリプションの本質は、ある体験を届け、その利用を習慣化していただくという「新しい暮らし方の提案」なんです。
井原:いかに自分の好きな音楽やアーティストに出会えるか、使い勝手が心地よいかが、顧客体験なんですよね。追求すべきは、安さや曲数の多さではないと思います。
西井:「こんな暮らしをしたかった」と感じていただくことが、サブスクリプションビジネスの目指すところ。Spotifyであれば、繰り返し使うことで「音楽を発見する」瞬間に心地よさを感じ、サービスのファンになっていくのだと思います。
井原さんがおっしゃった、「一度体験いただければ、絶対に良さがわかる」という言葉は、「一度体験したら、使い続けたくなる」ということ。まさに、サブスクリプションらしいなと感じました。本日は、ありがとうございました。