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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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定期誌『MarkeZine』特集

自社の「顧客」を定義できているか? 未来の顧客を含めたマーケティング実践

 すべてのビジネスにおいて、その相手となる顧客とどのように関係を築いていくかは大きな命題だ。しかし、そもそも誰に向かってどんな価値を提供したいのか、自社の「顧客」を定義できず、既存顧客のみにフォーカスした限定的なCRMで成果が先細りになってしまうことも多く見受けられる。「未来の顧客を含めた“ターゲット顧客全体”を捉えよう」と提唱するのは、書籍『顧客起点マーケティング』の著者でもある西口一希氏。本稿ではこの考え方と、顧客から発想するCRMについて詳説する。

※本記事は、2019年11月25日刊行の定期誌『MarkeZine』47号に掲載したものです。

「顧客=買ったことがある人、接点がある人」なのか?

 「顧客」とは、ビジネスの現場でごく日常的に口にしながら、実はあまり明確に定義されていない言葉だと思います。顧客=現在買ってくれている既存顧客なのか、現時点では接点がないけれど、これから接触したい人も含むのか。私の考えでは、後者です。

 では、自社がまったく想定していない人が買ってくれたら、その人も「顧客」でしょうか? もちろん一人の大事なお客様ではありますが、私が実践しているマーケティングのフレームワークでは、「顧客」の定義に含んでいません。顧客とは、「誰にどんな価値を提供するのか」という自社のミッションによって規定されると考えているからです。

 私はこれまでたくさんの経営者やマーケティング責任者からお話を聞かせていただく中で、「ターゲットとする顧客層があいまい」という共通の課題を感じてきました。

 「自社(もしくは担当ブランドや商品)の顧客はどのような方ですか?」「もし自社が100%シェアを獲得したとしたら、顧客は“何人”になりますか?」という質問を、これまで何百人もの経営者やマーケティング担当者に投げかけましたが、答えられたのは自分が考案したプロダクトをスタートアップで立ち上げた起業家、たった一人でした。

 自社の顧客が不明瞭だと、企業全体が同じ方向に向かってビジネスができず、各部門や部署が異なる顧客像や顧客セグメントを見て仕事をすることになります。そうすると、結果として個別最適の集合体の域を出ず経営戦略とはならず、経営とマーケティングが連動せずに実りのない無駄な投資を繰り返してしまいます。

 そもそも、自社のミッションの提供先となる顧客の定義=市場の定義を持たずにビジネスをしているのは、根本的な問題だと思います。

 そこで本稿では、既存顧客だけを追うCRMの問題点を踏まえて、未来の顧客まで含めた自社の顧客を定義し、正しくセグメント分解することの重要性をひも解いていきます。併せて、企業目線ではなく「カスタマーの生活の中で自社がどのように存在し、関係を築いていけるか」という考え方にCRMの概念をアップデートすることを提案します。ここではBtoCをベースに書いていきますが、人数を社数に、顧客の生活をビジネス環境に置き換えれば、同じ考え方をBtoBにも十分応用できます。

 なお、基本的な考え方は翔泳社さんから今年出版した自著『たった一人の分析から事業は成長する実践顧客起点マーケティング』にまとめており、読んでいただいた方には既知の話もあるかと思います。本稿は特に通常業務で既存顧客向けのCRMにあたっている方や、顧客ロイヤルティの向上に課題を持つ方に向けて構成していますので、参考にしてください。

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自社のミッションを踏まえて「顧客」を定義する

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この記事の著者

西口 一希(ニシグチ カズキ)

大阪大学経済学部卒業、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)マーケティング本部に入社。ブランドマネージャー、マーケティングディレクターを歴任。ロート製薬 執行役員マーケティング本部長として「肌ラボ」「Obagi」「メラノCC」「デオウ」「ロート目薬」などの60以上のブランドを統括。ロクシタンジャポン代表...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:42 https://markezine.jp/article/detail/32350

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