顧客起点マーケティングの全体像
駆け足でしたが、既存顧客だけを追うCRMの問題点を通して、未来の顧客まで含めてターゲット顧客全体を捉えることが重要なのだと感じていただけたでしょうか。他の理論を否定するものではありませんが、私のフレームワークでは、未来の顧客を含めてターゲット顧客を定義し、正しくセグメント分解して人数で管理・運用することは大前提です。
先に紹介した顧客ピラミッドまたは9セグマップの作成は、顧客起点マーケティングの一部で、全体は以下のようになっています。本稿では①と②をCRMの観点から解説し、マーケティング施策によって各セグメントの人数が動いたかを確かめるというフレームワークの運用(【5】と【6】)に少しだけ触れました。すべてを紹介しきれませんが、この一連の流れを繰り返すことで、確実な事業成長が見込めます。

CRM=顧客の生活の中で自社がどう関係を築いていけるか
最後に、CRMという言葉を捉えなおしてみたいと思います。中盤の9セグマップ、突然消えてしまうロイヤル顧客の箇所で、ライフスタイルの変化によって「これまで大量に買っていたが急に買わなくなる」ことが起きると解説しました。こういった現象は、企業目線での顧客の捉え方だと予測しにくく、背景に何が起きているのかも想像しにくいものです。特にECでゴリゴリとCRMを推進する場合にありがちですが、お客様が単なる数字に見えてきて、地に足をつけて生活している一個人だという視点を失ってしまうのです。
いつ買ってほしい、どのくらい買ってほしいという考えは、突き詰めるほど顧客にとっては押し付けになっていきます。発想の方向を反転させて、一人の顧客の生活において自社プロダクトがどう使われているのか、自社がなぜいいのか、他社ではなぜダメなのか、24時間365日の中で描いてみてください。その上で、よりよいリレーションを築けるようアプローチしていく、これこそが本来のCRMであり、私が提唱する「顧客起点」のマーケティングです。
未来の顧客を含めて顧客全体を捉えること、そしてCRMの概念を転換すること。この2点によって、手詰まりと思われたマーケティングにも大きなポテンシャルを見出せると思います。