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生活者データバンク

量的データではみえない生活者の真意を知る

個々人の「背景情報」にフォーカスする重要性

 生活者に直接意見を聴取する定性調査は、座談会形式のグループ・インタビューと、1対1形式でのデプス・インタビューが主流である。ターゲットとして俯瞰して知りたい場合と、1人の人をより深く知りたい場合とで使い分けされるが、近年はデプス・インタビューの割合が増えてきている。

 個々人をより深く知るデプス・インタビューは、特にブランドや商品、あるいは商品カテゴリーの価値探索に用いられることが多い。生活者がどんなニーズ(顕在・潜在含め)を持っていて、ブランドや商品にどんな魅力を感じて購買・使用しているのか、というのは、その人個人のライフスタイルや価値観、生活環境、商品使用理由などの「背景情報」と密接につながっている。つまり、より深い理解を得るためには、個別的な「背景情報」が重要な意味を持つ。

 ただし、この「背景情報」を得るには難しさもある。インタビューの対象となる生活者は、記憶バイアスの限界のもと、その場で思い出せること、意識に残っていることしか回答できない。そうなると、たとえば商品購買時や初回使用時にどういう状況であったのか、何を考えていたのかなど、情報が取り切れずに終わってしまうケースもある。

記憶にとらわれない「背景情報」を得る

 こうした記憶バイアスを解消するためにインテージで行っているのが、「レコーディング・インタビュー」という調査である。事前にスマートフォンを使って、特定の商品を利用した“その瞬間”の情景や気持ちを、写真と文字で行動のたびに記録してもらい、その記録を振り返りながらデプス・インタビューを行うものだ(図表1)。

図表1 レコーディング・インタビューのフロー
図表1 レコーディング・インタビューのフロー
(タップで拡大)

 対象者の記憶に左右されなくなると同時に、事前の記録を改めて振り返って語ることで、対象者自身の新たな気づきも導くことができる。この手法を用いて行った調査の事例を紹介したい。

分析事例:プレミアム系アルコールの価値探索

 近年アルコール市場においてクラフトビールなど、やや高価格帯のいわゆる「プレミアム系商品」の人気が高まっている。これからのマーケティングにおいて、価格勝負ではなく、付加価値をつけてプラスの金額を払ってもらえるような商品開発はますます重要になってくる。そこで、生活者がプレミアム系アルコールに対してどんな価値を感じているのかを、「背景情報」となる飲用実態の深掘りをすることで探ってみた。

 調査対象は、週1回以上、プレミアム系アルコールの指定銘柄を飲用している20代〜50代の男女とした。最初に事前のレコーディング調査として、指定銘柄を飲んでいるときの“その瞬間”の記録をしてもらう。飲用シーンがわかる写真(お酒と合わせた食事やおつまみなども含む)を撮影してもらい、「飲用しているシーンの説明」「その商品の好きなところ」「その商品を飲もうと思った理由」「飲んでどんな気持ちになったか」などについてWebシステムを使ったアンケートで回答してもらった。

 それに加えて、別の角度からもプレミアム系アルコールの価値を探るため、“プラスの金額を払っても購入したい”という気持ちに類似性のある、「プチ贅沢」の購入実態も合わせてレコーディングしてもらった。こちらは、対象者自身が「プチ贅沢」と認識して購入した商品を、その写真と購入場所・価格、「どんなところに惹かれたか」「なぜ購入に至ったか」「満足度とその理由」などを記入してもらった。3週間の調査期間の中で、各テーマ3回以上の記入を依頼した。

 なお、このレコーディング調査は、後のデプス・インタビューに呼集するサンプル数の3倍の人数を対象とした。そのため、各対象者が記入したデータをリアルタイムでみて、文量が豊富であるか、調査テーマにより相応しい内容であるかという選定をすることができた。その意味では、通常のインタビューに比べて最適な対象者を多く獲得できる可能性があると言えるだろう。また、記入内容を確認して、精査すべき点を事前に整理できるため、重要な点を聞き漏らす心配も軽減できた。

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シーンの深掘りから見える価値の違い

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この記事の著者

小島 賢一(オジマ ケンイチ)

株式会社インテージ カスタマー・ビジネス・ドライブ本部 副本部長

2002年インテージに入社。リサーチアナリストとして数多くのプロジェクトに携わり、中でも商品開発支援を得意とし、ワークショップなどのファシリテーションも務める。2018年よりインテージクオリスに出向し、定性調査全般の指揮をとりながらサービス開発に...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/11/25 14:45 https://markezine.jp/article/detail/32368

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