※本記事は、2019年11月25日刊行の定期誌『MarkeZine』47号に掲載したものです。
加速するリアル店舗業の閉鎖・破産の波
2019年9月末、かつて一世を風靡した米ファスト・ファッションの「Forever21」が破産法を申請した。既に「Sears」「Toys“R”Us」「Lord&Taylor」「Dean&Deluca」「Barneys New York」「RadioShack」と、日本でも有名な店舗型の流通企業が続々と破産や閉鎖に至る。
一方で現在も生き延びている側である「Macy’s」「Gap」「Lowe’s」「Abercrombie&Fitch」「Zara」等でさえも、大幅な店舗の閉店を進めている。日本においても、オンワード・ホールディングスが約600店舗の閉鎖を発表するなど、世界的に店舗への逆風が強まっている。
不振の根本的原因は来店起点のビジネスモデル
このリアル店舗が消えゆく原因を、日本では「アマゾン・エフェクトの猛威」と短絡的に押し付けがちだ。この「エフェクト」という言葉が、単に流通業とCPG業を被害者的に扱ってしまう。むしろ、自分たちの既存のビジネスモデル自体が時代遅れであり、己自身が原因の核であることに気づけていない。
これまでのリアル店舗を軸とする流通・小売企業は、「お客様が大切」「顧客体験」などと掲げながらも、顧客が来店してくれる(大量のトラフィックを稼ぐ)ことを前提とした、「自店舗」「自社商品」を起点にする殿様商売を継続している。マス・マーケティング的な「プッシュ」ビジネスモデルから脱することができていない形式だ。現在続いている不振の単純かつ最大の原因は、顧客とのオンライン上の契約関係づくりと、顧客からの「プル」に応えることを怠っていたことにある。