企業が発信した広告メッセージや製品・サービスが思わぬ反発を受けて炎上したり、お蔵入りになったりすることが後を絶ちません。何人ものプロフェッショナルが関わり、企業が広告予算を投じたプロジェクトが、なぜそんな事態に陥ってしまうのでしょうか。
MarkeZine BOOKSの新刊『ダイバーシティ×マーケティング コミュニケーションをデザインする6つの視点』は、経営課題のひとつともいわれる「ダイバーシティ(多様性)」を中心に、企業と消費者のコミュニケーションにどのような変化が起きているのかを様々な角度から見ていきます。
「こうするべき」「こう考えるべき」と言われても、「多様性は重要で尊重すべき考え方だけれど、自分には何もかも受け入れることは難しい。どうしたらいいのだろう?」と迷うのは、仕方のないことです。人は誰しも「無意識の偏見(Unconscious Bias)」から逃れることはできないからです。
「ダイバーシティ? ああ、女性活躍の推進のことでしょ?」と考える人が多いのも日本の特徴ですが、実は当事者は世の中の人全員です。よく槍玉に挙げられがちな男性にしても、「普通の男性」という固定観念に苦しんでいる人が大勢います。
本書ではこれまでの通念を見直しダイバーシティなマーケティングを実践するための6つの視点について解説。行動経済学、男性学をはじめ、アイデアをクリエイティブに落とし込む際の仮説構築の事例、日本で受け入れられやすいアプローチなど、実践的なヒントを紹介していきます。
なお、本書は、Amplify Asiaの代表取締役である白石愛美さんのMarkeZineでの連載「ダイバーシティから考える、新しいマーケティング・コミュニケーションの視点」と「インターナルマーケティングとこれからの企業のかたち」をもとにしています。こちらもぜひご覧ください。
目次
はじめに
1章 多様な時代に企業やブランドに求められているもの
日本におけるダイバーシティのイメージ
不可視のダイバーシティへリーチする
2章 ダイバーシティとインクルージョン ~当事者は誰なのか~
ダイバーシティとインクルージョン
ダイバーシティの当事者は誰なのか?
3章 インターナルとエクスターナル ~社内と社外、2つの多様性~
内部と外部、2つの視点 インターナル・マーケティング
業績やイノベーションに与えるインパクト
企業内のファクトがエクスターナルでの共感のカギに
4章 【視点1】アンコンシャス・バイアス ~すべての人にある思い込みがコミュニケーションにもたらす影響~
誰もが持っている「無意識の偏見」
アンコンシャス・バイアスの類型とクリエイティブ
事例1:トヨタ
事例2:阪急電鉄
事例3:いせよし
事例4:Dove
イメージ管理型のブランディングは転換点に
5章 【視点2】行動経済学 ~バイアスを是正するための行動デザイン~
マーケティングでも活用されている「行動経済学」
アンコンシャス・バイアスとナッジ理論
ダイバーシティ促進のための行動デザイン
1. カーテン一枚が変化をもたらす
2. ヒラリー・クリントンの写真を見るとスピーチが上手になる
固定観念を是正するキャンペーン
6章 【視点3】男性学 ~ダイバーシティ当事者としての男性とのコミュニケーション~
「男性学」がもたらす視点
海外の企業が表現した「新しい男性像」
「普通の男性像」に苦しめられる男性のインサイト
1. 世代を超えた「変わらない思い込み」に注目する
2. 「男らしさ」を示す達成基準を多様化する
3. 自分ごと化=自分の中の多様性と向き合う
7章 【視点4】ビリーフ・ドリブン ~多様な消費者を惹きつける企業の信念~
消費者が求める企業の信念
ビリーフ・ドリブンなキャンペーン事例
事例1. ハイネケン
事例2. パンテーン
ダイバーシティには経営陣の覚悟が必要
8章 【視点5】視点取得 ~ダイバーシティは共感だけがキーではない~
共感とは違う「視点取得」の考え方
押し付けの「共感」で失敗しないためのトレーニング
「義理チョコやめてみてもいいかも」という対話
9章 【視点6】リフレーミング・バリュー ~日本で受け入れられやすいダイバーシティへのアプローチ~
新たな価値を提案するために
建設的なイノベーションを可能にする「リフレーミング・バリュー」
10章 おわりに ~企業自身が多様な意志を示す時代~
企業は何のために行動するのか