OMOを「実現」するためのシステムを構築する
――OMOを実現するマーケティングプラットフォームのポイントはありますか?
滝口:OMOでオンライン・オフラインを意識しない優れた購買体験を提供するためには、以下の3つのポイントをチェックする必要があるでしょう。
- 収集したオン/オフデータを顧客軸で統合管理する環境を用意する
- 統合したデータを最適なタイミングとチャネルでアプローチできる
- PDCAサイクルが高速で回されて、常に最適化されて施策が実行できる
高野:滝口が挙げた3点に関連して、オンラインとオフラインのデータを統合し活用できる環境が整ってきたのは企業にとって追い風です。
まずは、企業が所有するファーストパーティデータの保存場所が、オンプレミスからクラウドに移行しつつあります。Salesforce Marketing CloudやGoogle Cloud Platform(以下、GCP)のBigQueryなどの環境でデータを管理する企業も増えており、グローバルソリューションとシームレスにつながるようになってきました。物理サーバーとつなぐとなるとエンジニアリング力が求められるため、組織にとってハードルとなっていたところが解消されつつあります。
これに合わせてマーケティングソリューションやアドテクソリューションも進化しています。たとえばGoogle 広告などは位置情報を推定した来店計測ソリューションを提供しています。
そして、企業が顧客情報を集める環境も改善しています。アプリも進化していますし、オンライン決済やキャッシュレスも普及が進み、すべてデジタルで完結できる環境が揃っています。個人を特定できる情報は匿名化するなどプライバシーへの配慮が前提ですが、情報を収集しやすい環境が整ってきています。
OMO実現の強い味方となるGoogle Cloud Platform
――OMOプラットフォームの構築にあたって、Google アナリティクス 360(以下、GA 360)などマーケターには馴染みのある存在であるGoogle マーケティング プラットフォーム(以下、GMP)系をどのように活用することができるのでしょうか?
滝口:オンラインの広告、アプリの閲覧などの情報を収集するには、GA 360やアプリ開発プラットフォームのFirebaseは非常に有効です。2017年にGoogleとSalesforce社がグローバル戦略パートナーシップを結んでおり、GA 360とSalesforce Marketing Cloudをシームレスに連携できるようになりました。GA 360で作ったセグメントに対してMarketing Cloudからメール、LINE、DMでアプローチできます。
これにBigQueryなどのGCPのサービスを組み合わせることで、可能性がさらに広がります。
GCPのマーケティング活用というと、これまではGA 360のローデータをBigQueryに格納して分析するケースが主でしたが、このところ店舗への来店、購入、イベント参加などのオフラインデータもGCPに格納して、顧客のオンライン/オフライン行動を把握しようという企業が増えています。GMP側でも来店計測などできることは多いものの、購入などのトランザクション系データまでは蓄積しにくいことを考えると、GCPはハイレベルなOMO実現のための重要な要素と言えます。
具体的な活用イメージとしては、以下のプロセスをGMPとGCPでサポートでき、LTVの改善につなげることができます。
- Display&Video 360とGoogle 広告で顧客にセール情報をお知らせ
- Optimize 360で自社サイト上に店舗限定のクーポンバナーを提示して実店舗へ送客
- 店舗在庫切れなどでコンバージョンに至らなかった顧客に対して、Google 広告を使って売り切れ商品が再入荷したことをお知らせしてECに送客
高野:ビジネスがECサイトに完全に閉じていれば売上データを加味した分析まである程度GA 360側で実行できますが、実店舗があり顧客が実際に来店するサイトや、定期購入サイトであれば、WebでのCVだけを追うのでは不十分です。GA 360で取得できない売上データをGCP上に置き、Web、アプリの行動ログなどのデータとつなげて顧客を理解する――ここはOMOの肝でありGCPのパワーが発揮される領域です。