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リアル店舗やイベントで気持が盛り上がった所にプッシュ通知 オン・オフデータ統合で顧客体験は次の段階へ

 OMOの重要性が語られるなか、どうやってデジタルとリアルの顧客接点データを統合し、顧客の「モーメント(瞬間)」を捉えたリアルタイムコミュニケーションを実現するかがマーケティング関係者の注目の的となっている。国内外の事例に詳しい電通デジタルの矢内岳史氏、セールスフォース・ドットコムの中谷卓洋氏にお話をうかがった。

先進企業が取り組む「VIP接客」「試着リターゲティング」

――OMO(Online Merges with Offline)、アフターデジタルなどといったキーワードがデジタルマーケティングで重要になりつつあります。今生活者に何が起きているのでしょうか?

中谷:当社のリサーチ部門が実施した国際的な調査によると、企業が提供する顧客体験がその企業が提供する商品やサービスと同じぐらい重要と考えるユーザーは84%おり、ユーザーの66%が優れた顧客体験により多くの対価を払って良いと考えているという結果が出ています。生活者の体験価値への期待値がこれまで以上に高まっているといえます。

矢内:モバイル、ソーシャル、スマートスピーカーなどのスマートデバイスやIoTといった形であらゆる人、モノ、コトがスマートにつながる世界が実現に近づき、生活者の意識の中でもデジタルトランスフォーメーションが起こりつつあります。

 こうした環境下で企業は、デジタル・リアル双方の接点で顧客のデータを取得して、商品やサービスの購入意欲が高まる時間・場面・行動等の組み合わせである「モーメント」を捉えたリアルタイムコミュニケーションを行う必要があります。

左から、セールスフォース・ドットコム マーケティングクラウド本部 戦略ソリューション部 部長 中谷卓洋氏、電通デジタル データ/テクノロジー部門 ソリューションディベロップメント事業部 シニアコンサルタント 矢内岳史氏
左から、セールスフォース・ドットコム マーケティングクラウド本部 戦略ソリューション部 部長 中谷卓洋氏、電通デジタル データ/テクノロジー部門 ソリューションディベロップメント事業部 シニアコンサルタント 矢内岳史氏

中谷:小売の場合、店舗送客施策によって来店した顧客の情報を店舗スタッフに送り、過去の履歴、趣味嗜好などを踏まえてコーディネート提案するような「VIP接客」が考えられます。送客においては、店舗の近くに来たときに顧客情報に基づいたアプリプッシュを行うことも可能です。

 「試着リターゲティング」も好例でしょう。試着したが買わなかった顧客にフラグを立てておき、その後試着した商品の価格の値下げや、在庫の減少をプッシュで知らせて、ECでの購入や再来店を促すというものです。

矢内:リアルな体験は強い印象を残しますが、それに続くデジタルでのオファーがタイミングを逸してしまうと機会損失につながります。試着という顧客の気持ちが盛り上がっているモーメントを把握して、デジタルでもタイムラグを設けずにコミュニケーションすることが効果的です。

リアルタイムコミュニケーションが効果的なのはこの業界だ

――デジタル/リアルの行動データが統合されることで、新しいおもてなしを提供できるのはどのような業界でしょうか?

中谷:旅行・交通業界や、ホテルなどのホスピタリティ業界で多くの活用事例が出てきています。たとえば、欧州のある空港はセールスフォース・ドットコムのソリューションを導入して顧客との関係を深めてLTV最大化を実現しています。

 この空港はスマホアプリで顧客とつながり続けることで快適な時間を過ごしてもらおうとしています。たとえば駐車場の予約をしておくと、駐車場に着いたタイミングで空港内のルートガイドがスマホにARで表示されます。そして、顧客がヘルシー志向ということがわかっていれば、空港内にあるヘルシー志向向けのレストランのクーポンを送る、といった具合です。

矢内:より良い顧客体験を提供すれば、空港での滞在時間が延びて再利用が促進され、LTVも拡大しますね。その過程で、アプリをより利用してもらえると、多くのデータが集まり、さらに良い顧客体験の提供につながります。

中谷:消費財企業の事例も増えています。海外のある大手消費財企業では、ポイントプログラムを展開しつつWebのパーソナライズを行い、ID登録や再購入を促しています。目的は単なる再購入の促進というより顧客とより緊密につながることです。

 顧客とつながった後、アプリのダウンロードなど違うタッチポイントでのつながりを構築して、最終的にはロイヤルティを高めサブスクリプションモデルに誘導します。

矢内:多くの消費財メーカーは購買者のデータを持っていないことに危機感を持っています。消費財は検討商材ではないため、モーメントを捉えることが大切です。テレビに接触した瞬間、イベントに接触した瞬間でオファーをかけるなど、リアルタイムなコミュニケーションには大きな可能性があります。

必要なのは顧客接点を束ねる司令塔

――このようなリアルタイムの統合マーケティング・コミュニケーションを実現するためには、どういったマーケティング基盤が必要になるのでしょうか。

中谷:セールスフォース・ドットコムでは、「Marketing Cloud」に属するプロダクトとして「Interaction Studio」を提供しています。これはリアルタイムで顧客体験を可視化し、顧客が喜ぶタイミングでオファーを送れるソリューションです。

 「Interaction Studio」は顧客接点を束ねる司令塔のような存在で、Web、モバイル、コールセンター、店舗、場合によってはATMやキオスクのような端末など、リアルとデジタルの接点から得られるデータと顧客データを統合し、アクションにつなげます。

 データの統合だけ、Webのみなどチャネルに特化したソリューションは多数存在しますが、「Interaction Studio」はリアルとデジタルの行動データとCRMデータを統合でき、かつ最後のアクションまでつなげることができる数少ないソリューションです。

Interaction StudioとCDPの違い

――SalesforceにはCDP(カスタマーデータプラットフォーム)のソリューションもあります。データを統合するという意味では類似した機能に見えますが、違いはどこにあるのでしょうか?

中谷:CDPはどちらかというとデータレイクに似ており、細かな粒々のデータまで含めてデータを蓄積します。さらに顧客軸だけではなく様々な軸でデータ分析でき、作り出したセグメントを各タッチポイントでのコミュニケーション施策と連携させるのがCDPの役割です。

 「Interaction Studio」はすべてのデータを抱えるものではなく、基本的には顧客の行動データをリアルタイムに受け入れ、瞬間的にその行動データに対してアクションが必要かを判断し、必要であればすぐにアクションを発動させる「ハブ」といえます。

 「Interaction Studio」が判断をするために必要なデータは、CDPの中に入っていることもあります。逆に「Interaction Studio」の中での判断情報をCDPに渡して分析に活用することもあり、お互い補完関係にあります。

 「Interaction Studio」だけでも、リアルタイムな行動データを集めてそれに基づいてアクションを起こすことができます。もしCRM的なデータや基幹システムのデータを分析し「Interaction Studio」に連携させる場合はCDPも組み合わせた方が良いでしょう。

OMO時代にはサービス間連携を考慮に入れてプラットフォームを選ぶ

矢内:CDPやDMP単体で「Interaction Studio」の世界を実現しようとすると、各システムを連携するためのAPIを多数開発する必要があります。データも判断のプログラムも複雑になり開発コストが膨大にかかるので、「Interaction Studio」のようなソリューションの価値は大きいですね。

中谷:セールスフォースの顧客接点基盤の強みはシンプルに実現できるという点にあります。「Interaction Studio」では少ないコストで他のセールスフォースのプロダクトなどと統合して活用できます。

 銀行を例にとると、顧客がカードローンをWebで調べてからコールセンターに電話をかけてきた場合、コールセンタースタッフの画面に顧客情報と一緒に「カードローンをおすすめしましょう」というリコメンドを表示させることができます。

矢内:現在、企業のデジタルマーケティングセンター、店舗などのシステムはバラバラで構築されており、連携しようとすると開発だけで数年かかることがあります。これからの顧客接点はOMOが当たり前になってくるので、連携を考えてプラットフォームを選定するという視点が重要になってきます。

システム導入・運用とコミュニケーションプランニングの両立が重要

――リアルタイムコミュニケーションを提供するシステム・体制を構築するためには、どういったプロセスが必要になるのでしょうか。

矢内:3つあると思います。まずはオンラインデータとオフラインデータを統合してリアルタイムにアクションにつなげる仕組みを整備する必要があります。

 次に、業務や組織を横断した取り組みになるので、組織・業務・評価をどうするのかについても考える必要があります。たとえばデジタルからオフラインに送客してオフラインで購入が成立した場合、コンバージョン貢献に対する評価をデジタルと店舗でどう分かち合うか。これは重要なポイントになります。

 最後に、コミュニケーションですが、リアルタイムオファーはきちんとプランニングしないとかえってお客様の離反を招いてしまいます。たとえば、店舗にチェックインした瞬間にアプリプッシュが大量に出てくるとネガティブな印象を与えるかもしれません。顧客のロイヤルティを考慮してどのような形や頻度のコミュニケーションなら心地いいのかを設計することで、顧客体験を高めることができます。

 電通デジタルには、「基盤のインプリメント」「組織改革や業務改革などのコンサルテーション」「コミュニケーションプランニング」それぞれに専門組織がありワンストップでの支援が可能です。セールスフォース・ドットコムとの緊密な関係を活かして、最新のソリューションである「Interaction Studio」の活用についても支援できる体制を整えています。

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーライター

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/12/16 11:00 https://markezine.jp/article/detail/32470