飲食での機会損失、満足度低下が課題に
平地:今回は、Jリーグクラブのジェフユナイテッド市原・千葉(以下、ジェフ千葉)がウフルのスタジアム・アリーナ向けソリューション「売り子ール(※)」を試験導入し、顧客サービスが向上できるか検証した事例についておうかがいします。
※売り子ールとは:座席に設置しているQRとNFCの付いたカードを読み込むと、ブラウザでビールなどの飲食物が注文できるソリューション。売り子側も、買い手を探す手間が省け、最小限の移動で観戦を妨げない販売ができるメリットを持つ。
まず、ジェフ千葉の抱えていた課題から教えてください。
株式会社プラスクラス 代表取締役 平地 大樹氏
Webコンサルティング会社プラスクラス代表。プロバスケ選手引退後、人材業界を経験し、Web業界へ。営業活動一切ナシのWebコンサル事業をプラスクラスとして収益化し、現在はプラスクラス・スポーツ・インキュベーション代表として、スポーツ界にWeb/ITを取り入れることを推進している。
高橋:現在、我々は来年度からのフクダ電子アリーナを含む蘇我スポーツ公園の指定管理権取得を念頭に動いています。それは、スタジアムをより快適な環境にするため、そしてスタジアムからの収入を作るためです。
その上で、欠かせない要素の一つが飲食です。これまで、サッカーというスポーツの特性上、お客様は試合中にスタジアムグルメや飲み物などをほとんど買いに動かないという課題がありました。これにより、試合前やハーフタイムに飲食ブースでは行列ができ、来場者の満足度は下がる上に飲食売店の売上も伸びなかったのです。
試合中に、飲食物を買うことができるような仕組みが導入できれば、飲食の売上を向上できるとともに、並び列を減少させることができて、快適なスタジアム空間の実現につながるのではないかと思っていました。
ジェフユナイテッド株式会社 経営企画部 新規事業準備室 室長
高橋 薫氏
これまでクラブで広報・運営・ホームタウン・事業計画などを担当。ホームスタジアム「フクダ電子アリーナ」やジェフのクラブハウス「ユナイテッドパーク」の建設時には、クラブ側の責任者として関わる。現在は、フクダ電子アリーナの指定管理権の獲得に向けて動くなど、新規事業の企画立案・実行を担っている。
平地:確かにサッカー観戦だと、試合の流れも速く、一点の重みも大きいので、試合前とハーフタイムぐらいしか飲食物を買いに席を外す時間が取れないですよね。
高橋:そうなんです。立って、声出して、見るだけがサッカー観戦ではなく、ビールを飲みながらゆっくり見るという観戦方法があってもいいと思うんです。既存のサッカーファンだけでなく、家族連れの方などが週末に遊びに来るといった観戦スタイルも提供できればと考えていました。
サッカーファンのペインから生まれたサービス
平地:しかし、なぜウフルの「売り子ール」だったんでしょうか。
高橋:そういった悩みを抱えていたタイミングで、最初別の提案をウフルの立石さんが持ってきてくださっていたのです。その中で「売り子ール」の仕組みを他スポーツで導入していると聞き、「そのほうがおもしろい!」と改めて提案いただくことにしました(笑)。
ただ、提案タイミングが2018年シーズンの終盤だったので、次のシーズンでかつビールが売れる時期に導入したいとお話をし、2019年シーズンの7月に2週連続で行うホームゲームにて試験導入することにしました。
提案していただいた立石さんはもちろん、開発している方もサッカー観戦の特性をしっかりわかっていて、かゆいところに手が届く提案だったのも導入理由としては大きいですね。
立石:元々「売り子ール」を開発した人間が大のサッカー好きで、子供ができたときに売店にビールを買いに行くのが大変だと思ったところから、サービスのヒントを得ています。また、既存のサービスではアプリが中心で、ダウンロードする手間があったり、事前オーダーをして自分で取りに行ったりしなければならない課題がありました。
株式会社ウフル シニアプランナー立石 晴久氏
「売り子ール」のセールスを担当している。
立石:しかし、「売り子ール」はカードのQRかNFCを読み取るとブラウザが立ち上がり注文できるので、手間が少ないというメリットがあります。席番も紐づいているので、ユーザー視点で苦労する部分はあまりないかと思います。