440万の顧客IDとリーグ主導の基盤構築でマーケティングを進化
平地:最初にJリーグのtoCマーケティングの現状について教えてください。
鈴木:Jリーグのマーケティング部は入場者数をKPIに施策を展開しています。2024シーズンはコロナ禍によるすべての制限がない状態で活動できたこともあり、1,254万人と過去最多の入場者数を記録することができました。
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この成果を支えたのが、会員基盤であるJリーグIDです。2017年には48万ほどだった登録者数を445万(2025年1月時点)まで拡大しており、月間アクティブ率も約23~25%と、有益なデータとなっています。
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鈴木:また、Jリーグのマーケティングを強固なものにするため、リーグ主導でデジタル共通基盤を開発し、各クラブに提供しています。様々な顧客データが蓄積されているマーケティングデータベースはJ1~J3までの全60クラブが導入し、マーケティングオートメーションも10クラブが活用しています。
これにより、各クラブが共通の基盤で分析やシナリオ設計、メールやLINEでの情報発信など、高度なマーケティング活動を行うことができています。
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9segsを駆使し、認知未使用層・高関心への施策強化
平地:強固な顧客基盤とインフラを整え、リーグ全体のマーケティングレベルを高めてきたのですね。Jリーグでは顧客起点マーケティングのフレームワークである9segs®調査を2021年度から実施していると聞いています。
2024シーズンは9segsを起点にどのようなマーケティングを行ってきたのでしょうか。
鈴木:2024シーズンは、下の図にある「③ライト層・高関心」「⑤離反層・高関心」「⑦認知未利用層・高関心」を重要視し、特に⑦を最重要セグメントに設定しました。
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これらのセグメントに対し、関心想起型の施策と獲得型の施策に分けて施策を実施しています。
関心想起型の施策に関しては、全国キー局・ローカル局と協力して新番組を立ち上げるなどして露出を増やしたり、Jリーグが持つオウンドメディア・SNSアカウントで発信したりしています。キー局でのメディア露出量は2023年から2024年で約1.4倍に、ローカル局でのメディア露出量も2022年と比べて約4.1倍と大きく増加しています。
一方で、獲得型の施策に関しては、開幕期や夏休み期などの大規模招待施策、国立競技場を活用したプロモーション施策やチケット販促を目的としたデジタル広告などがあります。
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