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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

スポーツ×デジタルマーケティングの現在位置を探る

17万名招待にIPコラボ、すべて「顧客」が主語/過去最多入場を記録したJリーグを支えるマーケ戦略


GW・夏休み期はTHE国立DAY&人気IPコラボで集客を加速

平地:開幕期では既存ファン・サポーターから外に広げていく設計ということは、GW・夏休み期は新規層へのアプローチを強化してきたのでしょうか。

鈴木:おっしゃる通りです。GW期・夏休み期は、人が動く時期なので新規顧客の獲得に重きをおいた施策を実施しました。特に効果的だったのは、THE国立DAYとちいかわやブルーロックといった人気IPとのコラボレーションです。

 THE国立DAYは、地方のチームを応援しているが、普段ホームスタジアムに足を運ぶことが難しい在京ファン・サポーターへの観戦機会を提供するとともに、クラブのスポンサーも大規模なサンプリングや露出ができる良質なスポンサーアクティベーションの実現にもつながっています。

 また、花火やドローンを使った演出、豪華アーティストによるライブなど国立ならではの演出ができる上に、東京23区内で非常にアクセスも良い。年1~2回Jリーグの試合に来てもらう目的において、国立を新規層・ライト層向けのショーケースとして有効活用しない手はありません。

 実際に2024シーズンのTHE国立DAYには平均5万人が来場、計13試合で約65万人が来場しました。

平地:THE国立DAYはリーグが主導でやっている取り組みとしてとても興味深いので、この連載で改めて深掘りしたいです。

 次にIPコラボに関して、どのようにコラボ先を選定しているのか、また実際の効果についても伺いたいです。

鈴木:コラボ先の選定に関してはIPの持つファンベースの熱量の高さと認知度の掛け合わせを意識しています。この2つの要素が強いほど、グッズ販売やイベントの盛り上がり、プロモーションの広がりが生まれます。

 効果に関しては、2024シーズンに反響の大きかったものをいくつか紹介します。たとえば、VTuber/バーチャルライバーグループ「にじさんじ」とは2022年からコラボを継続しており、コラボ動画視聴者の9割はサッカーの非関心層など、普段リーチできない方にJリーグの興味を持つきっかけを作ることができました。

 また、ちいかわとのコラボではJ1全20クラブとのコラボグッズや国立競技場での特別コラボイベントなどを実施しました。グッズもちいかわファンはもちろん、その人気を見たJリーグサポーター・ファンも購入いただき、国立競技場の「ちいかわ×Jリーグ応援シート」も非常に好評でした。

 このにじさんじとちいかわのコラボはSNSでも話題となり、Jリーグ公式SNSアカウントが2024シーズン前半で発信したコンテンツのエンゲージメントトップ10にランクインしていました。

新規→サポーターの転換に向けたCRMもデジタルをフル活用

平地:ここまでのお話は、新規来場を目的とした施策がほとんどでした。しかし、招待やIPコラボを通じて獲得した新規顧客をF3転換していくには、デジタルを駆使したCRMが重要になると思いますが、その点はいかがでしょうか。

鈴木:既存ファン・サポーターの来場強化は、2025年シーズンに注力したい戦略の一つです。そして、既存の来場強化に欠かせない要素の一つが、選手の推し活だと思っており、選手を起点にした施策をいくつか展開しています。

 たとえば2024年秋には、JリーグIDにお気に入り選手登録機能を追加しました。同機能では、お気に入りの選手を登録すると、選手の細かなデータを見たり、推し選手動画と呼ばれる推し選手のハイライトをまとめた動画コンテンツを楽しんだりできます。

 推し選手動画にはAIを活用し、試合翌日には動画を自動で生成できます。この機能を公式アプリ「Club J.LEAGUE」やLINEミニアプリを通じて配信しています。

 こうした選手にフォーカスした顧客体験に力を入れつつ、CDPを駆使したデジタル広告の拡張配信など、2回目以降の来場にもつながるような施策を日々展開しています。

平地:今お話しいただいた取り組みがJ1~J3まで全60クラブの多くに浸透しているわけですよね。各クラブが9segsで共通認識を持って施策を行えるよう、どのようにしてマーケティングのレベルを高めてきたのでしょうか。

鈴木:月に1回全クラブのマーケティング担当者と会議を実施しています。その中でJリーグのマーケティング戦略やアプリの新機能、各種ツールの使い方をお伝えしています。

 また、人材の転職・異動もあるので、人材育成を目的にした研修会も実施しています。

 各クラブとリーグのコミュニケーションを密にすることで、各クラブのマーケティング担当者の熱量が高まっている実感がありますし、リーグ主導の施策を実施する際に協力してくれるクラブが増えています。コミュニケーションが足りないと、リーグとクラブが連動した施策を実施することが難しくなり、スケールメリットが発揮できず施策効率も落ちてしまうので、各クラブの皆さんと積極的にやり取りすることを大事にしています。

平地:ありがとうございました。最後に2月14日から2025年シーズンが開幕しますが、今シーズンの抱負を教えてください。

鈴木:2026年に控えたシーズン移行など、これからJリーグは大きな変革期に突入していきます。その中で、2025シーズンは現行の大会方式による最後のシーズンとなります。2024シーズンは過去最多の入場者数となりましたが、今年はそれをさらに更新して、過去最高の状態でシーズン移行を迎えたいと考えています。そのためにもJリーグIDをはじめとしたマーケティング基盤をフル活用し、新規顧客獲得→育成→定着という戦略をさらに強化していきます。

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この記事の著者

タカハシ コウキ(タカハシ コウキ)

1997年生まれ。2020年に駒沢大学経済学部を卒業。在学中よりインターンなどで記事制作を経験。卒業後、フリーライターとして、インタビューやレポート記事を執筆している。またカメラマンとしても活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/02/20 17:12 https://markezine.jp/article/detail/48276

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