デジタルでもリアルでも、変わらない接客を:IDOM
事例の3つ目は、中古車販売店「ガリバー」を運営するIDOMによる、デジタルでのCXを向上させていく取り組みだ。
同社のオウンドメディア「221616.com」では、CRO(Conversion Rate Optimization)戦略として、Webサイトのボタンやテキストリンクを中心に改善を進めてきた。しかしモバイルからのアクセス急増にともない、こうした施策だけでは対応し切れない部分が増えてきた。モバイル画面はPCと比べて小さく、コミュニケーションに限界が生じてしまうためである。
そこで同社は、ユーザーに合わせた接客を強化すべく「KARTE」を導入。セグメントに合わせたバナーの出し分けから着手していった。
顧客の質問や要望に関してはbotで対応していたが、2019年4月からは「オープンチャット」と呼ばれる、会員登録は不要で不明点をすぐに質問できる機能も導入した。問い合わせ内容の振り分けはbotで行い、コミュニケーションはオープンチャットを通じて有人で行うことで、導入箇所のCVは1.55倍、全体利益は10%増と成果を上げた。
オープンチャットは、購入を強く促すよりも、サポートを強化し離脱を防ぐという方針で運用している。ユーザーの不安や疑問を先回りして解消することで、機会損失を削減していくのが狙いだ。
同時にCTA(行動喚起)も工夫を重ねている。たとえば中古車を購入しようとアプリを起動した顧客でも、トップページを閲覧している人と、自動車ローンの記事をじっくり読んでいる人とでは、置かれている状況やその時の感情は全く異なる。
そこで、チャットで声掛けするときの文言をページごとに変えたほか、「何かお困りですか?」というオープンクエスチョンではなく、「○○に困っていませんか?」などとクローズドクエスチョンで質問。動くキャラクターをアイコンに設置して、チャット利用の心理的ハードルを下げる工夫もしている。
3社の事例を解説した福島氏は、「それぞれの会社の取り組みから、CX向上のポイントが見えたはず。1社でも多くの企業に取り組んでいただきたいです」と述べ、セッションを締めくくった。