データに対する過度な期待・不安はなぜ起きる?
廣澤氏はセッションの最後に、「データには過剰な期待、そこから生まれる不安が広がっているように思う。これを広告主、代理店、プラットフォーマーはどう乗り越えていくのか」と疑問を投げかけた。
倉迫氏は「何かを証明するのにデータがあると信ぴょう性が上がるように見えるから期待が生まれます。しかし、見方によって何通りもの結果が出てきて一つにまとめることがとても難しく、不安も生まれると思います。このジレンマを解決するために、データで何を知りたいのかをぜひプラットフォーマー側にも発信していただき、正しい見方で一緒に証明していきたいです」と語った。
齊藤氏は「データに対する不安は、未知から生まれてくるものだと思うので、リテラシーを上げることが重要」とした。自身が分析できるとまではいかなくとも、出てきたデータを鵜呑みにしてだまされないような見方ができるようになるべきということだ。

広告主の立場である山崎氏は「データを主語にするな」と強く主張した。データが主語になることで過度な期待や不安が生まれ、本来あるべき姿から歪んでいっているという。
「本当の主語は、自社やクライアントのサービス・商品の良さを伝え、売上を上げること。そのためにマーケティング戦略を考えていて、必要なものの一部として存在するのがデータです。しかし、データが主語になると、目的がないので行き場を失ってしまうんだと思います」(山崎氏)
廣澤氏は3名の話を聞いた上で、以下のようにセッションを締めくくった。
「そもそもデータの背景を知りたいと思う気持ちが大事だということですね。膨大で把握し切れないことも多いデータを、どのように的を絞って意味解釈していくかが重要なのではないでしょうか」(廣澤氏)
メディア、広告代理店、広告主の隔たりの訳
続いて、第2部では「メディアビジネスの広がりから考える『脱・メディアバイイング』」と題したセッションが行われた。モデレーターにはフリークアウトの澤田氏が、パネリストにはデジマ下剋上の主宰でもあるサンスターの兒嶋氏、Rettyの進藤氏、delyの田中氏が登壇した。
同セッションは、プログラマティックな広告取引が進化し、メディアマネタイズの形が多様化している現状を踏まえ、広告主とメディアが共通の認識を持つにはどうすれば良いのかについて考える内容となっている。
最初に、澤田氏は「メディア、広告代理店、広告主の間に隔たりを感じる。それはなぜか」と切り出した。

兒嶋氏は「そもそもメディアの人と会う機会がない。広告代理店からの提案書を見ても、メディアの情報はエクセルでまとめられたURLだけということも多く、各メディアが媒体資料を作っていたとしても届かないことが多い」と3者の隔たりの現状を明かした。

これに対し進藤氏は、メディア側から見た隔たりの原因について語った。
「アドテクベンダーや広告代理店が良いソリューションを作っていることもあり、そこに甘んじているメディアも多いと思います。場合によっては、アドネットワークを入れるだけ、広告代理店やメディアレップ頼りになっているということもあります。メディアを運営する立場としては、新しい広告主を見つける、広告主に喜ばれる広告商品を作る努力を進んでやらないといけないと思っています」(進藤氏)

田中氏も「アドテクベンダーや広告代理店頼りのほうが楽だけど、それでメディアの本質を伝えるのは難しい。そこはジレンマですね」とした。