データファーストでやりがちな失敗とは?
MZ:まず、必要かつ取得できていないデータを把握することが必要なんですね。
松本:よくある失敗としては、データが煩雑になっているからCDPやDMPでデータを統合しようというケースです。
最終的に人間がダッシュボードとかでキャッチアップして意思決定できる指標ってせいぜい3つから5つだと思います。そのため、足りないデータが何かを最初に考えないと、データを整理しても活用できずに終わってしまいます。

MZ:デジタルマーケティングに関わる方が、悪い意味でデータドリブンに動いてしまうのってなぜなんでしょうか。
松本:20代のころ、マーケティング全体を見ている方とデジタルマーケティングを専門にした方の相性が良くないと感じている時期がありました。その理由を今にして振り返ったとき、それぞれの見ている目線が違ったからだと気付きました。
マーケティング全体を見ている方は、目線が消費者に向いています。その仮説は推察や推測の域からは出なかったかもしれませんが、消費者が何を求めているのかを第一に考えていました。
一方、デジタルマーケティングに関わる人はデータや数字に目線が向いていたと思います。年齢や性別、職業などはデータをもとに割り出すものの、その人たちが普段どんな生活をしているのか想像できていませんでした。本来であれば、そこに対して労力をかけるべきなんです。
MZ:データで見える範囲以外のことを想像することが重要ということですね。それを想像するために必要なことはなんだと思いますか。
松本:ターゲットが何に価値を感じるかを常日頃考えることですね。人間は、何かしら価値を感じるから行動すると思うので。
具体的には、ひたすら色々な企業のクリエイティブを見るようにしています。特にテレビCMを見るのがいいと思っています。「この会社はこのメッセージを届けたいんだ」「ターゲットはこの層だな」という勘所が付いてきます。答え合わせはできませんが、その考察をnoteとかで発信すれば読んだ人からのフィードバックももらえるので、感覚が身に付くと思います。
データは答えじゃない
MZ:今後のMarkeZineに対して、期待することはありますか。
松本:あくまで僕のイメージですが、外資系消費財メーカー出身のマーケターの方が国内企業に転職してきて、外資由来のマーケティングが浸透してきたと思っています。
そして、MarkeZineを通じて問いたいのが、我々デコムでは消費者のインサイトを扱っていますが、企業の中でインサイトと名前の付く部署がどれだけあるのかということです。インサイトを踏まえたマーケティングは、まだ進んでいません。ぜひ消費者心理に関わるコンテンツが増えると嬉しいです。
また現在は、企業の課題解決に関する記事が多いと思います。それだけではなく、消費者の課題を解決するマーケティングに関わる話が増えるとおもしろくなってくるのではないでしょうか。
MZ:では最後に、マーケターの皆さんに一言アドバイスをお願いできますか。
松本:昔の自分へのメッセージでもあるんですが、「意外とデータは答えじゃないよ」ということです。データばかり追い求めていた時期もありましたけど、データではっきり答えが出て、スムーズにKPIも改善できて売上も増えたケースって30%あるかないかくらいです。
一方、あるデータを計測できなかったことで、結果的にあるデータを重要視しすぎたこともあって、失敗したこともありました。もう少し、データにとらわれず視野を広く持っておくことが重要だと思います。
そして、広い視野を持つために「デジタルコンテンツしか読みません、見ません」などと言わず、雑誌や新聞、テレビなど様々なコンテンツに触れて、そこに出ている広告の持つメッセージを想像してみてください。
MZ:データにひたすらに向き合ってきた松本さんだからこそ、「データで見えないものを見る」重要性が伝わりました。ありがとうございました。