世界が認めた22歳の天才プログラマー
今までの取材の中で一番だった。事前に用意した取材メモは一度も見なかった。なぜなら筆者は、このミレニアル世代とZ世代の中間に位置するテックの天才を見る機会を一瞬たりとも逃すまいと、彼の存在を吸収するのに必死だったからだ。ご存知のない方も多いと思うので、まず彼について説明しよう。
アイドリス・サンドゥは1997年生まれの22歳、ガーナとアメリカの国籍を持つ。ガーナで生まれ、3歳で家族とロサンゼルスに移った。10歳よりプログラミングを始め、13歳の時にGoogleのインターンとしてGoogle Plusのプロジェクトに携わる。以来Google、Boeing、Twitter、Lockheed Martin、Raytheon、Uber、Snapchat、Instagramという企業にプログラムやアルゴリズムを提供。UberにはAutonomous Collision Detection Interfaceという自動運転に関わるプログラムを18歳の時に提供している。
2017年には“Marathon Store”という世界初のスマートショップ(Amazon Goのような店員のいない自動チェックアウト制の店舗)をオープン。現在も多くの企業のコンサルティングを手がける傍らで、カニエ・ウェストやビヨンセなどのアーティストとも共同のプロジェクトを実践している。日本文化への造詣も深い。
“会社”ではなく“人”とのつながりを大事にする
江端:アイドリスは色々なアーティストとコラボレーションをしていますね。カニエ・ウェストとはどうやって出会ったのでしょうか?
アイドリス:彼とは2年ほど前に知り合いを通じて出会いました。出会った瞬間から、お互いのエネルギーに惹かれ合っていましたね。実は、僕はカニエと出会う前から、いつか彼と仕事を一緒にする日が来るだろうと思っていました。というのも、彼の作る曲やプロモーションビデオなどを見て、お互いの感性が非常に近いことを感じていたのです。
江端:一緒に仕事をすることになるという予感があったのですね。すごく興味深い。Googleと仕事することもわかっていたのですか?
アイドリス:いえ、まったく(笑)。一緒に仕事をすることになるのがわかるのは個人で、企業ではないんです。
僕はスティーブ・ジョブズにすごく影響を受けた一人です。ただ、Apple、あるいはGoogleと……というように「この企業と一緒に仕事をしたい」と思った事は一度もありません。Appleのシニア・バイス・プレジデントだったアンジェラ・アーレンツと話した時に、彼女はAppleのことを“ピープルカンパニー”と言っていて、それにはすごく共感しました。
江端:アイドリスが重視しているのは“会社”ではなく、あくまで“人”ということですね。