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人を知るには自己理解から マーケティングの本質を追求する力を磨く方法とは

仮説構築の力と、学習して次に生かす力が必要

 以前はなかった情報流通のプラットフォームが複数登場し、複雑な構造を持ちながら企業と消費者の関わりに影響を及ぼしているのが今だとすると、富永氏は「その複雑な構造のどこを突くべきか、といった発想が必要なのは以前と比較して変わった点」と話す。

 「どんな商品を作るべきか、アイデアを生み出して形にしていくというマーケティングの役割自体は、それほど変わっていないと思います」(富永氏)

 続けて中村氏は「プロセスに関しては、たとえばスピードが大幅に速くなったり、ベータ版をリリースしてユーザーを巻き込みながら着地点を探すのが一般化したり、といった変化があります」と指摘。ここで例として両者から言及されたのは、A/Bテストの功罪だ。デジタル化によってA/Bテストが非常に容易になり低コストにもなったことで、「仮説のない、無駄なA/Bテストが増えているのも現状では」と中村氏。

 「仮説検証の場としては非常に有効だと思いますが、回数をこなすことが目的になるなら、昔のほうが1回のテストの重要性もかける意気込みも大きく、本当にテストの意味があったのかもしれません。私がマーケターに必要な素質だと思うのは、自分で仮説を立てる力と、検証した結果を自分なりに咀嚼して次のアイデアに生かせる力。これは先の富永さんの話されたマーケティングの役割と同じで、昔から変わっていないことだと思います」(中村氏)

 重ねて富永氏は、“デジタルの誤謬”ともいうべき事態を指摘。店頭などリアルに目を向ければ、まだまだデータ化されていないタッチポイントは多いが、デジタルで取得できる粗い粒度のデータしか見なくなる問題がある。

無用な二項対立に進化の機会を奪われるな

 同時に、効率化や最適化が追求しやすくなったからこその疑問もあるという。富永氏がドミノ・ピザ ジャパンに携わっていた当時、日本のスタッフがプロトタイピングとA/Bテストを重ねてキリキリと直近の新商品を突き詰める一方、台湾に視察に行くと皆が1年後の商品を話し合いながら笑顔でのんびり働いていた。

 「ドミノ・ピザはグローバルで味とスピードを重視する会社ですが、国によってカルチャーは違います。この一件は、効率化やスピードの追求が人を幸せにするループにつながらないなら意味がないのでは、と感じました」(富永氏)

 セッション中盤、富永氏は自身の前段の発言を振り返り、「私の主張は古臭い内容に偏っていると思われるかもしれない」と述べる。世の中に一定の割合で存在する変化を嫌う人、既存の方法や前例に固執する人の見方とは違うと断りを入れながら、表層的には氏の意見も同じように受け止められることも多いという。「“デジタル時代なのにレガシーにこだわっている”という蔑(さげす)みと反発を、デジタル側の方々から感じることがあります」(富永氏)

 すると「デジタルvsレガシー」あるいは「変化に適応できる若年マーケターvsできない中高年層」といった二項対立が作られてしまい、双方の経験や“血”のインタラクションが起こればもっとマーケティングを進化させられるはずなのに、近視眼的な見方のせいでせっかくの機会を不意にしてしまう。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/01/30 14:55 https://markezine.jp/article/detail/32789

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