コミュニケーション円滑化を目的とした新規事業
MarkeZine編集部(以下、MZ):NTTドコモのWeb接客ツール「ecコンシェル」は、2016年6月の提供開始から、既に7,000社以上に導入されているそうですね。そもそもなぜ、御社がEC支援のツールを開発されたのですか?
北洞:当社は「新しいコミュニケーション文化の世界の創造」という企業理念を掲げていまして、その一環で「企業とそのエンドユーザーとの間のコミュニケーションを円滑化する」ことも視野に入れていました。私が所属しているイノベーション統括部では、BtoC、BtoC問わず様々な新規事業を日々模索しており、そのひとつとして数年前に着眼したのがWeb接客です。現在は他にもデジタルマーケティング領域のソリューション開発を進めています。
MZ:なるほど。Web接客という概念が登場して数年が経ち、ツールも複数出てきています。Web接客ツールの市場が伸びている背景をうかがえますか?
北洞:まず、ECの拡大期はいかに集客するかが課題になっていましたが、ECが一般化して多くの企業が「いかにコンバージョンするか」「いかにLTVを高めるか」にフォーカスするようになったということがあります。せっかく来訪したユーザーをしっかり会員登録や購買につなげる策として、Web接客ツールが重要な選択肢になっています。
マーケティング領域全体で、顧客体験の向上がトレンドになっています。リアル店舗では、店員さんが声をかけるなど店舗側から臨機応変なアプローチができますが、Webではユーザー自身が能動的に情報を探す必要があります。そこで、Web接客ツールを活用して顧客体験を向上させたいというわけです。
また、顧客体験向上のためにサイトを改修するのは大仕事ですが、Web接客ツールなら基本的には必要なタグを挿入するだけで実装できますので、成果に対してかかる手間が圧倒的に少ないという点でもニーズが高まっています。
考えるべきは無理なく運用可能か
MZ:市場の発展にともなって、ツールはどのような進化を遂げているのですか?
北洞:導入を検討する事業会社のニーズが特に高いのは、よりOne to Oneに近い接客や、マイクロマーケティングの実現です。手法としては、ある程度細かな粒度でセグメントしてターゲティングすることになりますが、その中でもエンドユーザーの細かなニーズを汲み取って個別最適な対応をしたいという声が多くなっています。ツールの側も、より細かな対応やカスタマイズを可能にする流れがあります。
MZ:事業会社は、数あるツールの中からどのような観点で自社に合うものを選べばよいのでしょうか?
北洞:Web接客ツールに限らず、マーケティングツールは導入しただけでは機能しないもので、運用が必ず必要になってきます。なので、大前提として考えていただきたいのは「導入後に無理なく運用できるか」という点です。しばしば、導入することが目的になってしまうケースがありますが、入れただけで成果は上がらないので、運用メンバーのリテラシーも含めて運用のしやすさを十分考える必要があります。
ツールの活用に不安があれば、コンサルティングや運用サポートが手厚いツールがいいかもしれませんし、チームでいろいろと試せそうなら操作性やカスタマイズのしやすさ、また機能の柔軟性などを吟味するといいと思います。