※本記事は、2020年3月25日刊行の定期誌『MarkeZine』51号に掲載したものです。
インターネット広告費の足元 2020年予測のオモテ・ウラ
先日、毎年恒例の「日本の広告費」が発表された。2012年以来毎年、「主要4媒体」をはじめ日本の「媒体別」広告費は、各媒体が前年同月実績から下落し続けているのは周知のとおり。それらの広告費項目の下落続きを補完しつつ、毎年二桁%の成長を遂げていたのがインターネット広告費、という図式がこれまでの定番であったろう。2019年はついに、インターネット広告の構成比が、テレビ広告の構成比を上回ったことが発表されたが、この年間の数値を月ごとに注視してみるとどうなるだろうか。
図表1は経済産業省が発表している広告費の月次の伸び率だ。過去2年のデータを見ても旧4媒体(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ)を含む他の広告費カテゴリーすべての項目は毎月▲(マイナス成長)が連続し、対照的に「インターネット広告費」は毎月プラス成長が続いている。
ところがよく見れば、広告費の成長を牽引していたはずの「インターネット広告費」の二桁成長は止まり、徐々に数%台に落ち、伸び率に鈍化が見え始めている(図表1拡大部分)。
2019年後半、特に10月~12月連続のインターネット広告費は「停滞=ゼロ成長」に入ったようにも見える(追記:その後に公開された経産省の資料では、2020年1月度は、インターネット広告が前年比マイナスに転じ、-2.0%を記録している)。
2020年のインターネット広告や広義のマーケティング領域における経済成長の予測には「グローバル成長」と、「個を尊重する一時見直し」の2つの考え方が混在する。目に映る大半は前者であり「昨年の結果」「株価の最高値」などが繰り返し発表され、未来の利益を期待したい多数派の情報が溢れる。
一方の後者は「風向きが変わっている」の認識で、これまでのマーケティング方程式が豹変する危機意識を持つ。筆者は圧倒的に後者の立場にある。このマーケティング界隈の極端な二分化状況は、CCPA、GDPRの発端にとどまらず、さらに上空で起きているブレグジットや米国大統領選挙などの「世界の経済(&政治)市場」を彷彿させる。