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AIで顧客の見える化と酒類の売上増加 トライアル×サントリーが見据える、今後のリテールマーケティング


トライアル×サントリーが取り組んだ「100坪プロジェクト」

MZ:では、どのような取り組みを行ってきたのか教えてください。

中村:トライアル様の酒類カテゴリの売上を最大化するための施策を行っていきました。

 まず、福岡のモデル店舗で、広域からの集客を目的とした「100坪プロジェクト」を立ち上げ、酒類売り場を約2倍に拡大。酒類を徹底的に販売していく流れを作り、同時にお客様をより深く知るためのPoC(Proof of Concept:概念実証)を実施してきました。

 たとえば、データに基づいてターゲティングしたお客様に対して、レシートにアナログ印字のクーポンを発行するピンポイントマーケティングを仕掛けました。そして、このクーポンを購入時にリアルタイムで提示できないかをトライアル様と模索した結果、現在トライアル様で提供されているスマートショッピングカート(レジが一体化したカート)の初期プロトタイプの開発へと至りました。

スマートショッピングカート
スマートショッピングカート

 このような施策を通じて、トライアル様の持つデータと分析部隊の力を提供していただきながら、酒類カテゴリを売り伸ばすとともにサントリーブランドのファンを増やすための施策を繰り返していきました。

 また、このような取り組みを進めていく中で、リテールメディアの概念が確立されていきました。カートやカメラだけではなく、最終的には店舗外・店舗内のお客様の買い物体験をいかに高度化できるか、満足度を上げていけるかが本質です。そして、このマーケティングもいかに高度化するかが重要で、その手段の1つとしてデジタルトランスフォーメーションがあります。

 短期的な売上ではなく、お客様、メーカー、流通の三方良し、どのような形で各企業の取り組みを変化していけば良いかを理論の型にすることを含め、今でもトライアル様とともに継続して取り組んでいます。

永田:弊社には売り場があるので、メーカーが欲しいデータをどれだけ提供できるかが重要です。そういった意味では、流通専用で開発したカメラやカートで可視化した、今まで見えなかったデータが、弊社がメーカーの皆様に提供できる価値なのだと思っています。

購買行動の見える化と酒類カテゴリの売上増を実現

MZ:両社の取り組みによって、どのような成果が得られましたか。

中村:データから、同じ購買者であってもアプローチの仕方に変化が必要だという裏付けを取ることができました。

 たとえば、カメラ上で得られた購買行動と、レジの決済データを突き合わせて分析を行ったところ、ヘビーユーザーとライトユーザーでは、商品を手に取って酒類売り場から離れる時間に約6倍の差がありました。

 この結果からわかったのは、売り場で買う銘柄を決めている人と、最短時間で購入する人がいるということです。価格やPOPを見せて購買を促す「売り場でアプローチが必要な人」と、売り場での滞在時間が短く「売り場以外でアプローチが必要な人」を明確に分けていかないと、マーケティングの効果は最大限に得られません。

 この検証から、購買データをクラスタリングし、適正なタイミングでプロモーションを繰り返し、現状も試行錯誤し続けています。

MZ:永田さんはいかがでしょうか。

永田:酒類カテゴリの売上が伸びましたね。元々飲料系の売上は好調だったのですが、サントリーとの取り組みで、より一層各地域の店舗理解度が深まり、適切な施策が打てるようになったと実感しています。

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これから求められる小売とメーカーのあり方

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この記事の著者

丸山 真希枝(マルヤマ マキエ)

フリーライター。IT・Web業界を中心に100社以上のボードメンバーへの取材を行う。起業・マーケティング・クリエイティブなど幅広いトピックスを担当。趣味はヨガと瞑想。体幹と柔軟性を強化中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/05/29 18:30 https://markezine.jp/article/detail/33410

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