一度だけ「買いたい」仕掛けから何度でも「買いたい」仕組みへ
今回紹介する書籍は、『カイタイ新書 -何度も「買いたい」仕組みのつくり方-』。博報堂のプロジェクトチーム「ヒット習慣メーカーズ」の著作で、編著者は同チームをリーダーとして率いてきた中川悠氏です。
「今のマーケティング理論は、一度だけ『買いたい』と思うことに力点がおかれ、何度も『買いたい』と思うことがやや後回しになっている」と主張する同チーム。新商品のトライアル利用を狙った広告施策など、単発的な仕掛けによって短期的な売上を追い求めることに偏重した現在のマーケティングに疑問を投げかけています。
そう考える理由のひとつが、世界的な人口減少です。人口が増えていたかつての社会では、単発的な仕掛けだけでも母数が増えることによって売上の伸長が期待できたものの、人口減少が明らかになっている今後の社会では、単発的な仕掛けで一時的に売上が伸びても長期的には売上が下がり、ビジネスが成り立たなくなると言います。
では今後企業が目指すべきマーケティングとはどのようなものなのでしょうか? 本書で彼らは「生活者が何度も『買いたい』と思う仕組み」をつくり、売上を生み出し続けることこそ今求められているマーケティングだと言い、それを実現するのが商品の「習慣化」だと述べています。
商品ではなく「商品を使う習慣」を提案すべき
著者の言う習慣化とは、商品を使う習慣を生活の中に根付かせることです。実際、私達が普段行っている習慣にも、企業が手掛けたとされるものがいくつもあると言います。本書で示されているのは以下です。
・節分に恵方巻きを食べる
・クリスマスにチキンを食べる
・毎朝シャンプーをする
・毎週ジムに通って鍛える
(p.48~49)
著者は、企業が商品を持続的に売れるものにするためには、商品を広告で伝えるだけでなく、このように商品を使った「新しい習慣」をいかに世の中に提案するかが重要だと述べています。
また著者は長く続く習慣を変えるのは難しいと述べつつも、企業に「チャンスは必ず存在する」とも語っています。ダイエットで身につけた習慣を目標体重になってやめるように、習慣が一生続くとは限らないため、古い習慣が衰退するタイミングを見計らって、新しい習慣へのスイッチを促せば、生活者に受け入れられる可能性もあると述べているのです。さらにこの手法は、デジタル化により生活者の行動予測が可能になりつつある今、より実現性が高まっていると言います。
本書では、習慣化を実現させるためのステップを明確化した「PACフレーム」を紹介。「Prediction:習慣を予測する」「Addiction:習慣を設計する」「Conversation:習慣を広げる」の3ステップそれぞれに必要となる考え方を詳細に解説しています。この一冊を通して、より長期的な事業成長が目指せるマーケティング手法を学んでみてはいかがでしょうか?
本記事は秀和システムからの献本に基づいて記事作成しております