エージェンシー出身者に欠けがちな事業会社のマインドとは?
野崎:20代ラストの年で事業会社のマーケターとして働き始めたのは森さんにとってターニングポイントでもあったと思うのですが、デジタルエージェンシーから事業会社に移ってどのような変化を感じましたか。

森:事業会社と支援会社では、業務特性の違いから「求められるマインドが違う」ということを学ぶことができました。当時の上司から「良くまとまっていてわかりやすいけど、結論から来ていなくて、自分がどうしたいのかがわからない」と企画にフィードバックされることがありました。現状分析が続いていて、それに対するアクションが明確になっていなかったのです。
野崎:確かに、支援会社にいると資料の見せ方や多さで仕事してる感を出しちゃいがちですよね。私も前職のデジタルエージェンシー時代にありました(笑)。そこからどのように改善していったのでしょうか。
森:業務特性の違いがあるので、支援をする立場の代理店では、気づきを与えるような多面的な分析をアウトプットして出すことには価値があると思いますが、事業会社では意思決定することが求められるので、結論が求められますし、それがデータドリブンで導かれてないといけません。その観点を学べたことは非常に大きい収穫だったと思います。
特に転職したてのときは、不安もあって資料を肉厚に作りがちでしたが、事業会社では事業を成長させることが大前提になります。そのため、資料作成に時間を費やすよりも、課題の特定と意志決定に必要な情報を端的にまとめることを意識し、ある程度の精度になったらスピード感を意識したアウトプットをするようになりました。
未経験からインハウス組織を立ち上げ
野崎:支援会社から事業会社に転身し、これに慣れずに再び支援会社に戻る人も一定数いる中、今までの仕事感をリセットして自らフィットさせにいくスタンスはぜひマネして欲しいですね。この後は、現在のリクルートの前職に当たるスタートアップ企業に転職されましたが、その狙いを教えてください。
森:当時担当していたのがエンターテインメント系のサービスで、もっと人の生活を便利にするサービスに関わりたいと思っていました。その中で知ったのが前職のスタートアップでした。
まだベンチャーキャピタルから資本が入るようなフェーズで、当時いたメガベンチャーに比べたら環境も整っていませんでしたが、会社のサービスと掲げるビジョン、そして経営層にひかれたため転職しました。普段は今後のことも踏まえてキャリアプランを考えますが、ここは何というか感情的に選択していましたね。
野崎:当時はどういった職域を担当していたのでしょうか。
森:マーケティング部門の2人目の社員として、「デジタルの集客を任せたい」「インハウス化を進めたい」と言われていたので、ペイド広告全般の改善を行っていきました。
野崎:「デジタルの集客を任せたい」「インハウス化を進めたい」という話がありましたが、森さんはデジタル広告を運用した経験はなかったですよね?
森:はい(笑)。確かに、管理画面は細かく見るタイプでしたが、オペレーション業務には携わったことはありませんでしたし、その旨も面接時に伝えていました。しかし、会社のビジョンに共感している熱意が伝わって熱心に誘っていただけたこともあり、インハウスは未経験ですが飛び込みました。
野崎:最初はペイド広告の担当として入ったとのことですが、そこからどのように職域を広げていったのでしょうか。
森:まずは運用型広告のインハウス化を進め、その後SEOやデータ分析などにも関わるようになったので、エンジニアと一緒に集客チームを組成して施策に取り組むようになりました。
基本的にはそのときの課題に応じて、自社のリソースをフル活用していました。
野崎:急に事業会社のデジタルマーケターに転身してるのですが、足りないスキルセットはどのように補っていったのでしょうか。
森:実働部分に関する知識はネットを調べれば出てきますし、基本的なところは自分で調べつつ、スポットで外部のコンサルをお願いすることで、自社だけでもできると感じていました。あとはとにかくPDCAを回して実務経験を積むことですね。
性格的に黙々と自問自答しながら取り組むタイプであるのと、人数が少ない分、とにかく打席数は多かったと思います。ただベースのスキルはもちろん重要ですが、事業会社のマーケターに大事なのは課題を見つけて、それを施策に落とし込んで動かしていくことだと思います。