顧客とのコミュニケーションが「UGC」を創出する
前回の記事では、D2C企業に限らず、従来型EC事業者であっても事業成長のためには今後、D2C的「顧客起点」マーケティングのエッセンスを積極的に取り入れていくべきであり、そのためにはUGCやレビュー、VOC(Voice Of Customer)といった「顧客の声」を戦略的に活用する必要があるとお伝えしました。
昨今、ECサイトや広告クリエイティブにUGCやVOCを活用する事例が爆発的に増加していますが、D2C的なアプローチとして、上記のようなマーケティング工程以外の商品企画や商品改善、関係構築の工程においても「顧客からの声」とそれに対するアクションを、あたかもキャッチボールのように交わし続けることに注力する企業も増えています。
なぜなら顧客とのコミュニケーションが、戦略的価値の高い「UGC」を創出する源泉となるからです。UGCを創出するためのコミュニケーションに投資する重要性は今後どんどん増してくるはずです。
では、顧客とのコミュニケーションから生まれてきたUGCを戦略的に活用するためには、まず何から始めれば良いでしょう。D2C的マーケティングサイクルの中でどこをファーストステップにするのかは、自社のプロダクトやサービスの現状によります。
開発段階ではUGCで理想の顧客と関係を構築する
商品やサービスが発売前の「開発」の段階であれば、まず「顧客候補」を見つけてつながるための「調査・傾聴」が必要となります。たとえば、次のようなアクションです。
・顧客に近いイメージの知り合いに聞く
・SNSなどで顧客候補を見つけてその人に聞く
・顧客候補を対象としたメディアやコミュニティを作ってそこで聞く
・顧客候補が見ていそうな既存メディアで聞く
このように自社の商品やサービスの顧客となりそうな人を対象とした「調査・傾聴」の中で、「理想の顧客候補」を見つけてつながり、徹底的に話を聞いて「プロダクトが解決しなければいけない課題」を見つけることが、D2C的マーケティングサイクルを始める第一歩となるでしょう。
急成長を続けるコスメD2C企業の「DINETTE(ディネット)」は、創業者の尾崎さんが運営していた美容メディアの読者や、尾崎さんが自身で関係構築した美容系インフルエンサーの方とSNS上でコミュニケーションを重ねる中で、まつげ美容液という市場を発見し、「PHOEBE BEAUTY UP(フィービービューティーアップ)」というブランドを立ち上げるに至りました。
仮にメディア読者に「美容の悩みは何ですか?」と聞いても、一言目で「まつげ美容液です」と出てくることはないでしょう。読者との会話を積み重ねたり、彼女たちの言動を傾聴したりする過程で、潜在的な課題に到達することができたのです。
従来の「対N式」リサーチでは見えてこないような、真の課題にたどり着くためには、SNSを軸とした関係構築が極めて大切なのです。