短期間でニーズや関心が激しく変化
MarkeZine編集部(以下、MZ):ヤフーでは、以前よりユーザー動向について分析していると思いますが、新型コロナウイルスの影響でどのような変化があったか教えてください。
宮村:まずヤフー全体の利用者数は、このコロナ禍においても増加しています。新型コロナウイルスが流行する前の2019年12月と2020年3月のPVを比較すると26%増加しており、月間アクティブユーザー数は3月時点で7,904万人(※1)とヤフーグループで提供するサービスの多くでも利用者数が増加していました。
※1 出典:Nielsen Digital Content Ratings Monthly Total レポート2020年3月データ(Partial SDK)
宮村:ヤフー全体の月間ユーザー数は元々約7,000万(※2)とユーザーの伸びしろが限られている中で今回利用が増えたという結果は、普段はインターネットを利用しない方も、コロナ禍の影響で利用するようになったのではないかと推測されます。
※2 出典:Nielsen Digital Content Ratings Monthly Total レポート2020年2月データ(Partial SDK)
MZ:ユーザーはどういった情報を求めてヤフーを利用していたのでしょうか。
宮村:今回のコロナ禍で特徴的だったのは、ユーザーの求める情報が短期間で激しく移り変わっていった点です。
たとえば、料理のレシピに関連する検索だと、「真竹 レシピ」というキーワードが例年以上に伸びていました。おうちご飯が増えたことで少しマニアックなレシピ系ワードの検索数が流動的に変化しています。生活者の関心やニーズが、以前より明らかにスピード感をもって変化しているのを強く感じていました。
コロナ禍で検索数の伸びた業界は?
MZ:ヤフーは、業界ごとでも検討行動に関するデータを調べていますよね。特に特徴的な変化のあった業界はありますか。
宮村:ユーザーの興味・関心の変容が激しい中、各業界のデータを見たときに特に目を引いたのは「エンターテインメント業界」の伸び率です。
よく分析で活用するデータに「行動データ」と呼ばれる、ユーザー動向の分析に活用している抽象度の高いデータ群があります。これは、検索動向や検索傾向、ヤフー内でのクリック、閲覧履歴など、複数のシグナルをもとに約900カテゴリにユーザーを分類しています。このデータからもエンターテインメント業界、特にゲームやVODのカテゴリは、コロナ禍においても検討行動をするユーザーが増えていました。
その他にも、「オンラインで何かを行う」ような自己啓発系(英会話、塾、フィットネスなど)カテゴリの需要は伸び続けています。
MZ:確かに、私も新しいゲームに関する攻略情報など、エンターテインメントに関わることを検索する機会は増えた気がします。その他にはいかがでしょうか。
宮村:直近だと「家電業界」ですね。2020年1月~3月は微増程度で大きな動きはありませんでしたが、5月になると3月比で約135%と大きく増加しました。
これはあくまで仮説ですが、1~3月に新型コロナウイルスが徐々に話題化し、高価格帯の家電の購入を控える中、4月に緊急事態宣言が出ました。この状況が長期戦になる可能性が高くなったことで、家でのクオリティーオブライフを上げるための検索、家電や掃除関連の検索数が伸びていきました。おそらくユーザーの中で新型コロナウイルスとの向き合い方が少しずつ変化していったのだと推測されます。