収益額を伸ばしたアプリは?
図表5は、3月と比較して4月アプリの収益額を伸ばしたアプリTOP10である。

つまり緊急事態宣言後に、日本人が最も課金を増やしたアプリということになるが、見ての通り8つはゲームのアプリで、7つは日本企業のアプリである。これらのアプリは必ずしも利用人数が多い、いわゆるマスに広く使われているアプリではなく、緊急事態宣言後に大きく利用人数を増やしたアプリではないが、従来のファンの熱量をさらに上げて収益向上に成功させたアプリである。
実は、上位アプリの顔ぶれは、コロナ禍によって大きな変化は起きていない。しかしこれらのアプリは従来よりも一層の課金により収益を向上させた。つまり、日本において収益を大きく向上させるためには、広くユーザーを獲得していくよりも、1人1人のユーザーを大切にし、エンゲージメントを高める施策を実施していくことが重要なのだ。
図表6は、非ゲームの中で収益額を大きく伸ばしたアプリTOP10である。

コミック、ソーシャルネットワーク、エンターテインメントといったアプリが上位にランクインしたが、この構図は2019年の様相と変化はない。コロナ禍によってトップアプリの序列が大きく変化することがない、というのはこちらも同様のようだ。しかし特筆すべき点はその成長率である。1年前の2019年4月の収益額ブレイク非ゲームアプリTOP10アプリの合計収益額と上記2020年4月の合計収益額は、56.6%増、つまり1.5倍以上に増えている。ゲームと比べて非ゲームの成長率が高いトレンドはここ数年世界的に継続しているが、コロナ禍によってさらに加速したと見える。
今こそモバイル領域にアクセルを踏むべし
これまでのデータから、僅か2ヵ月の間に、モバイル市場の環境が過去にない変化を見せていることがわかるだろう。そして、この間に成長したアプリは、ユーザーの変化するニーズを迅速に捉え、素早くニーズに沿ったものを提供していることがわかる。変化の激しい状況下では、スピード感がこの市場で成功する重要な要素の一つと言えるだろう。
コロナ禍を受けて、人々がよりモバイルに時間とお金を投じる流れが起きている。このタイミングでモバイル領域にアクセルを踏む企業は、日本人の生活者のデータを手に入れ、それを元にさらに高度化したマーケティングへとステップアップするチャンスを得ることになる。
経済停滞から減速へ、と今後の見通しが明るくない中、先人の築いてきた製造・金融を土台に発展してきた日本経済が次のステージに進む時期なのかもしれない。