※本記事は、2020年6月25日刊行の定期誌『MarkeZine』54号に掲載したものです。
シンクロ 代表取締役社長/オイシックス・ラ・大地 執行役員 CMT 西井敏恭氏
ドクターシーラボにてWebマーケティングの責任者を務め、独立。国内大手からスタートアップ企業のマーケティングアドバイザーや、デジタルマーケティングのe-ラーニングサービス「コラーニング」の事業開発をしながら、オイシックス・ラ・大地で執行役員CMTとしてサブスクリプションモデルのEC戦略を担当。2019年からは家族型ロボット LOVOTを手掛けるGROOVE XのCMOに就任。デジタルマーケティングのプロとして、雑誌や新聞などのメディア、講演に多数出演。
Q1.最近、いちばん感銘を受けた書籍とその理由は?
富永朋信さんの『「幸せ」をつかむ戦略』です。
前職にいるときに初めて聞いた「行動経済学」という言葉。書籍のタイトルからはマーケティングとは全然関係のない怪しい本に見えますが(笑)、ドミノピザや西友などのマーケティング責任者を歴任されてきた富永さんが聞き手となり、行動経済学の世界的権威のダン・アリエリーさんが答える、というとても豪華な内容です。
行動経済学とは「人は必ずしも合理的な意思決定ばかりしない」ということをいろいろと研究された学問だそうで、多機能で低価格なスマートフォンよりもiPhoneが売れていたり、コーヒーが飲みたいはずだったのにインスタ映えするタピオカドリンクを買ってみたり、とマーケティングとかなり密接した関係にある知識だと思っています。インタビューアーの富永さんもそんな行動経済学にはまり、ついには権威であるダン・アリエリーさんに会いに行くわけですが、アマゾンが便利なのになぜ本屋に行ってしまうのか、というマーケティングの話から、チームのモチベーションをあげてパフォーマンスを発揮させるにはどうすればいいか、という話。
そして、パートナーとの幸せな過ごし方にまで話は広がります。マーケティング4.0「顧客の自己実現」やウェルビーイングなどが重要と言われている現在、改めて顧客の幸せを実現するってどういうことなのか、を考えさせられました。初めて付き合った相手と結婚した人と、10人と付き合った末に結婚した人はどっちが幸せか? 答えはぜひ書籍を読んでみてください!
Q2.「マーケターならこれを読むべし!」という書籍とその理由は?
ZOZOテクノロジーズ野口さんの『文系AI人材になる』です。
今後マーケティング職に就く人にとって、AIは切り離せない存在です。本書ではAIを「識別系」「予測系」「会話系」「実行系」×「代行型」「拡張型」などわかりやすく分類し、それぞれどう使うのか、といったところまで言及されています。AI系の書籍はたくさん読みましたが、一番わかりやすかったです。また、タイトルの通り文系の人でも利用できるところまで落とし込んでいるため、非エンジニアの方でもわかりやすいのではないでしょうか。
マーケターの方は文系出身が多いのですが(ちなみに私は理系です)、若手のマーケターだけでなく、経営レイヤーでもAIやデータといった話になった途端に現場に丸投げで事業を成長させるところまで落とし込めていない企業が多いと感じます。20年前はWebを使ったビジネスが事業の中心になる、と思っていましたが、Webを作れる人が中心ではなく、Webを使ってビジネスできる人が大事だったと思います。それと同じく、今後はAIを使ってビジネスを作れる人が重要になってきます。
もちろんデータの構造やプログラミングの知識などがあったほうがいいとは思いますが、まずはAIをわかりやすく分類し、実践できるところまで解説されているこちらの本を、マーケティングに関わる方は読んでみるといいと思います。