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現在活躍しているマーケターのターニングポイント

「広告屋とマーケターでは見える景色が違った」花王一筋の鈴木さんが、マーケターとして大事にしていたこと

広告屋として「終わりだね」と言われた気がした

MZ:花王という会社の中で、事業会社のマーケターのような働き方と、広告代理店などの支援会社のような働き方を経験されていたんですね。1社の中で、これだけ充実した経験をしていると、自信もついてきたのではないですか。

鈴木:いや、この事業側と支援側を行ったり来たりする過程で「自分は何者として胸を張れるのだろうか?」ということに、結構長い時間悩みましたね。誰も信じてくれないけど、1人でひそかにウジウジしてました。

 デジタルマーケティングの世界で、様々なキャリアの人がマーケターとして活躍しているのを見て、ある日「いろいろな視点で見ることができるって思えばいいのか……」とやっと踏ん切りが付いたのが、2017~18年くらいです。

MZ:花王の中で、制作からブランドマネージャー、デジタルマーケティングまで様々な業務を経験されている鈴木さんのような存在は稀有だと思ったのですが、自信がなぜ持てなかったのでしょうか。

鈴木:25年間広告屋として関わってきて、ブランドマネージャーの話を頂いたとき、会社から「君は広告屋としてもう終わりだね」と言われた気がしたんです。当時の年齢も50歳近くで、自らの発想の柔軟性やコミュニケーションに関する能力が限界に達したのだと。

 ブランドマネージャーになって以降、2年近くで新製品の開発や既存製品の改良など、マーケティングに関わるありとあらゆることを経験しました。その後クリエイティブ部門に戻り、部下のマネジメントをするようになりましたが、事業部にいた経験が活きて、以前よりも部門間の調整は上手くなっていたと思います。

 その後デジタルマーケティングのメンバーを率いるようになり、今の時代は正解がない分、私のようなキャリアでもいいのだと思えるようになりました。

自分自身ではなく失敗した事実やプロセスに目を向ける

MZ:デジタルマーケティングなど、変化の早い領域に関わるようになって、キャリアも様々な形があっていいと思うようになったのですね。ちなみにご自身がキャリアを形成していく上で意識していたことはありますか。

鈴木:ここまでのお話でキャリア形成を戦略的にやっていなかったことがバレていると思いますが……。強いて言うなら、経験して得られることはすべて必要な学びと捉えることではないでしょうか。

 失敗しなくては、わからないことが必ずあります。そのため、失敗したとしてもその原因を整理して、次にそうならないようにすれば学びとなります。ただ、失敗への向き合い方を間違うと素直に学べないかもしれません。

MZ:失敗と上手く向き合えない人とは、どういった方なのでしょうか。

鈴木:失敗した事実やプロセスではなく、自分自身に対して目が向いてしまう方ですね。「自分はどうしてこんなミスをするような性格なんだろう」と反省をしても、何も解決しません。

 たとえば、転んでしまったなら、転んだ自分を責めるのでなく靴ひもがほどけていたのか、石につまずいたのか、と事実に目を向けるということです。もし石が原因なら、次から歩くときに石がないかを注意すればいいだけのこと。

 「なんで自分は」と責めるのではなく、事実に目を向け先入観なく失敗と向き合っていくことが大事だと思います。

お客さんの本音に気づける2つの方法とは

MZ:確かに、事実に目を向けたほうがポジティブに失敗を捉えられて学びにもつながりそうです。その他に、仕事に向き合う中で大事にしていたことはありますか。

鈴木:メーカーの中の広告屋だったので、最終的なコミュニケーションだけでなく、商品開発やコンセプトワークの最初からブランドと並走するということです。お客様の家庭訪問やインタビューなどもできるだけ同席し、お客様の何に注目して、本音の気持ちをどのように解釈するか、を早い段階から経験してきました。

 自分の本音ですら正確に言語化するのは難しいし、お客様も常に論理的に行動しているわけではありません。そのため、お客様の何をもとに、仮説を組み立てるかを大事にしてきました。

MZ:お客様の本音や潜在的欲求を見つけ出すのが、マーケターにとって重要であり難しいところだと思うのですが、どのように本音かどうかを見極めているのでしょうか。

鈴木:2つあって、1つはお客様が本音を言っていないケースもあるので、まず言っている言葉をそのまま鵜呑みにしないことです。

 たとえば、「髪を切りたい」と話す女性も、実は彼氏に振られてむしゃくしゃして衝動で髪を切ろうとしているだけかもしれません。その場合は、相談に乗ってあげれば別に髪を切らなくても良くなりますよね。そのように、相手がなぜそのような発言や行動をするのか想像することが大切です。

 もう1つは、「ホントのところ、どうなの?」という好奇心を持つことです。研究所に話を聞きに行く機会が多かったのですが、科学や物理の話は正直苦手でした。でも、皮膚の構造や成分の作用などスキンケアに関することだと、自分ごと化しているので意外とおもしろく聞けるんです。

 この自分がおもしろいと感じた話を、お客様にどうにかして興味を持ってもらいたい、そのためにお客様の本音を探りに行く、というループを大事にしていました。

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特別視しなければ、デジタルに強くなれる

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この記事の著者

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/08/24 09:00 https://markezine.jp/article/detail/33794

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