特別視しなければ、デジタルに強くなれる
MZ:マス領域からデジタル領域へと幅を広げていったキャリアに見えるのですが、デジタル領域のスキルや知識を身に付ける際に意識していたことはありますか。
鈴木:2つあって、1つは逆説的かもしれませんが「デジタル」を特別なものと捉えないことです。どんな手段であってもコミュニケーションする相手が人間であることは変わりません。常に「それが相手にとってどうなのか?」を考えることが重要です。
もう1つは、カタカナ英語や頭文字3文字だけでわからないことは「わからない」と伝えて、自分の言葉に置き換えること。アドテクノロジーをはじめ、デジタルならではの技術を必死に学んだわけですが、最初のころは「頭文字3文字のあれはどういう意味? 何の略?」としょっちゅう周りに聞いていたので、みんな正直ウンザリしていたと思います(笑)。
たとえば、RTBという言葉がありますが、マス領域が長かった私はReason to Believe(お客さまがメッセージを信じる拠り所)と捉えるのに、それがReal Time Biddingだったらメンバーと話が通じるわけがないですし、「デジタル」という言葉が示す範囲は広いので中身をいちいち確認していました。
MZ:現在はマーケターキャリア協会(※)のメンターとしても活動されていますが、どのようなお悩み相談が多いですか。
(※)マーケターキャリア協会とは:「マーケターの価値を明らかにする」というビジョンのもと、ビジネスに対するマーケティングの貢献度の調査、マーケターのキャリア構築支援などを行っている一般社団法人(詳細はこちら)。
鈴木:私がお受けするのは、仕事そのものや仕事関係の人付き合い、セルフコントロールに関するお悩みが多いです。
MZ:そのような方に対して、どのようなアドバイスを?
鈴木:メンターとメンティーは6ヵ月の関係なので、この関係が終わっても、ご自身が自分の悩みに適切に対処できるようになる、自分の中に軸を作る、ということを目標にしてアドバイスをしています。
どのようなキャリアを歩んでいくとしても、そのときの自分を適切に評価できるように気持ちのバランスをとること、悩まなくていいことを悩まないようにするちょっとしたテクニックは必要になります。そのため、いくつか対処法を提示して試してもらい、効果があったか、1人でも続けられそうかをフィードバックしてもらっています。
その組織で学べることはもうないか考える
MZ:今後のキャリアで成し遂げたいことはありますか。
鈴木:自分の住んでいる、もしくは住んでいた地域や地方に貢献できる何かがあれば、取り組んでみたいですね。
MZ:最後に、キャリアについて考える、悩むマーケターにアドバイスがあればお願いします。
鈴木:やめる前に、本当にその会社や組織でできることはないのか考えてみてほしいですね。具体的に次の展望があればいいんですが、組織に合わないからやめる、転職を繰り返してしまうようなケースは非常にもったいないと思います。このようなパターンだと個人事務所を立ち上げない限りは、フィットした環境にたどり着くことが難しいでしょう。
事業会社のマーケターとしてやっていくなら、どこかの組織に属するため、1人では何もできません。自分以外の人に動いてもらって、ものやサービスを作ってもらい、それを販売してもらう必要があります。マーケターは消費者理解をする仕事であり、人間理解をする仕事とも言えます。社内の人のことを理解する力も当然必要なので、一度相手のことを理解しようとしてみてはいかがでしょうか。