コロナ禍で注目される「顧客維持」の重要性
「リーチ・獲得、その先へ~LINEで実現するダイレクトマーケティング~」をテーマに開催された「LINE Direct Day」。はじめにLINE 執行役員 広告ビジネス事業担当の池端氏が登壇し、新型コロナウイルスによって変化が起こっている現在のマーケット状況を概説した。
池端氏が取り上げた変化は「ECへの購買シフト」と「アプリの利用増」の2つ。App Annieが実施した調査によると、リアル店舗に足を運べない状況になったことで、オンラインでの購買が必然的に増加し、各業界のEC比率が上がった。それにともない、横ばいが続いていた国内アプリダウンロード数が飛躍的に伸張。2020年1月と3月を比較すると、ダウンロード数は31%増加していたそうだ。
「このことから、これまで以上にさまざまな事業者が、オンラインのマーケットに積極的に投資をしていくことが予想されます」と、池端氏。競争が激化する中で選ばれるブランドになるための方策の一つが、ダイレクトマーケティングだ。池端氏はその第一人者であるレスター・ワンダーマン氏の言葉を借りて、「ダイレクトマーケティングとは、価値ある顧客を獲得し、維持しようとするコミットメントである」と説明し、市場に大きな変化が起ころうとしている現在、向き合っている顧客一人ひとりと関係を継続していくことの重要性を主張した。
LINEはダイレクトマーケティングでは、認知からファン化にいたるまですべての過程が重要と認識し、各フェーズにおいて活用できるサービスを展開している。
「それぞれのフェーズにおいて有効なサービスをリリースし、アップデートを続けてきました。今回のイベントのテーマに『リーチ獲得とその先へ』を掲げましたが、その先とは、ユーザーとのつながりを維持し続けること、つまりコミュニケーションです。LINEはそれを実現できると確信しています」(池端氏)
8,400万人にリーチできるLINE広告。最新動向を紹介
次にディスプレイ広告と、LINE公式アカウントの事業企画を担当している菅野氏が、月間8,400万人(2020年6月時点)のユーザーにリーチできる運用型広告プラットフォーム「LINE広告」の詳細を語った。LINE広告は、LINEアプリやファミリーサービスのほか、「LINE広告ネットワーク」で外部のアプリへの広告配信も可能。2016年のサービスローンチから出稿アカウントは増え続け、現在では1万以上のアカウントが存在する。
元々、LINE広告はダイレクトレスポンス領域の企業出稿が多かったが、ここ数年で機能のアップデートが進んでいる。直近では、ターゲティング機能が拡充され、これまでの都道府県・市区町村単位から、半径指定(3㎞~)とより精度の高いターゲティング、収入や利用・行動状況といったステータス情報を通じたターゲティングも可能になった。今年は「類似オーディエンスの自動入札」機能の追加も予定されており、拡張・類似度に応じて自動で最適金額での入札が行われるようになるという。
加えて、動画フォーマットの拡充も進めている。今年1月にローンチした新サービス「Talk Head View」は、LINEアプリのトークリスト最上部への広告配信により、国内最大級のリーチを可能にする動画広告で、リーチ数は1日で約2,500~4,000万UU(2020年6月時点)。すでに70案件以上の実績がある。LINE広告とあわせて実施することで、認知効果のみならずダイレクトレスポンスの効果も高まり、とある事例ではTHV実施中は実施前と比べてCPAが40%減少したという。
企業のファーストパーティデータ活用を支える“LINEログイン”
続いて菅野氏は、データ活用を取り巻く環境が変化し、ファーストパーティデータ活用の重要性が向上している中、LINEログインの活用が改めて注目を集めていると明かした。自社サイトやアプリの会員情報とLINE公式アカウントのIDを連携させることで、ファーストパーティデータを活用した広告配信がLINEのプラットフォーム上の様々な場所で可能になる。
さらに推奨しているのは、LINEの様々なサービスで生成されたデータを一元的に格納し、マーケティングサービスにシームレスに活用する「クロスプラットフォーム」を活かすことだ。たとえば、LINE公式アカウントで集めたデータを活用して、LINE広告で配信したところ、CTR、CVRともに1.5倍になった例もあるという。
バンダイナムコエンターテインメント:Talk Head Viewの効果を実感
続くセッションでは、マーケティングにLINEを活用している企業が集結し、自社の取り組みを共有。本記事では、セッション「バンダイナムコエンターテインメント/BOTANIST/menuに学ぶ、LINEを活用したブランディングとダイレクトマーケティング」の様子をレポートする。
一般的に、ブランディングにはリーチや純粋想起、購入意向、ブランドリフト、ダイレクトマーケティングには、CPAやCPI、LTVといった指標がある。LINEではそれぞれの領域に貢献するサービスを提供しているが、これらを掛け合わせることでさらに効果を発揮できると、モデレーターを務めたLINE 広告事業本部 副事業部長の富永氏は言う。
実際にTalk Head ViewとLINE広告の併用で成果を挙げたのが、バンダイナムコエンターテインメントだ。登壇した同社の橋本氏は、NEマーケティング部でF2P(基本無料プレイ)サービス事業におけるマーケティング戦略に携わり、データの分析・活用を統括している。
モバイルゲームの市場規模が7兆円(※)にまで広がり、市場がレッドオーシャン化している中で、同社はターゲット戦略に合った広告配信の必要性を強く感じ、LINEの広告サービスの活用を開始した。
(※)7兆1,840億円。出典:『ファミ通ゲーム白書2020』
「市場が広がるにあたり、どのポジショニングを目指して、誰をターゲットにしていくかがより重要になっています。目指すポジショニングの第一想起にあがるためにサービスの特徴を印象付けられる広告サービスとして、Talk Head Viewを利用しました」(橋本氏)
実施してみると、非常に高い効果が出た。他の認知系メニューと比べて、2.5倍のリーチ数、オーガニックユーザーと比較し5倍の復帰者を獲得。掲載直後1時間のゲーム内プレイヤー数も2倍になった。ブランディングや認知獲得を目的としていたものの、既存ユーザーや休眠層にも有効で、ダイレクトの指標にも結び付いたのは嬉しい誤算だったという。
一方、同社のダイレクトマーケティングでは、MAU(月間アクティブユーザー数)やPUR(ユーザー課金率)など、課題とターゲットにあわせてKPIを変化させる方法を採用している。自社が保有するユーザーのプレイデータや広告配信データなどを分析・統合したもので土台をつくり、ユーザー属性や趣味嗜好など自社データで賄えないLINEのデータを掛け合わせて、LINE広告に生かす形で配信を行っている。ターゲティングには、拡張機能を使って今後ゲームをプレイするであろう人を推測し、母数を増やしているそうだ。
I-ne:LINE公式アカウントを各モールへの送客装置に使い売上UP
続いて「BOTANIST」「SALONIA」といったブランドを展開するI-neから、LINE公式アカウントを軸に、スポンサードスタンプとLINEセールスプロモーションを駆使したマーケティング事例が語られた。
特徴的なのはLINE公式アカウントの活用法だ。大半の企業がトーク画面から自社サイトへと誘客しているのに対し、同社は各モールへの送客装置と位置付けている。具体的には、「マルチカートLP」というランディングページをつくり、各ユーザーが買いたい店舗(Amazon、楽天、Yahoo!、自社EC)にタグで切り替え可能な仕様に。各モールが企画しているセール時期にあわせてクーポンの配信を実施している。
合わせてスタンプ施策も過去5回実施しており、新規顧客を集めながらモール経由で大きな売上を生み出すことができていると、同社 ECセールス部 部長代理の稲益氏は説明する。
「スタンプのクリエイティブによって効果が変化するため、クリエイターの選定が重要です。商品と絡めたものや、自分ゴト化してもらうためにカスタムスタンプにも挑戦しています。スタンプの配信にあわせてTwitterでもキャンペーンを実施し、拡散してもらえるようにしています」(稲益氏)
LINEのタイムラインも有効活用しており、エンゲージメントを高める目的で発信しているWebマガジン「BOTANIST Journal」の更新時に案内を出し、コンテンツへの誘導を欠かさない。さらにメッセージの開封・未開封データを収集し、未開封ユーザーへの配信を停止し、無駄な配信を抑え配信効率を上げる取り組みも続けている。
「すべて停止してしまうとシュリンクしてしまうので、未開封でも数回は打ち、閾値を超えたところでやめるようにルールを決めて、テストしながら検証しています。全配信と開封者のみで比べると、開封者のCTRに2.5倍の差があるなど、効果が見えつつあります」(稲益氏)
さらに店頭施策としては、LINEセールスプロモーションの「LINEマイレージ」を活用したキャンペーンを実施。店頭で購入した商品からQRコードを読み取ることでLINEポイントがチャージできる内容で、(1)POSを回す(2)“棚取り”への効果(3)オフライン購入者のLINEの友だち化を狙って行ったところ、LINEポイントがトライアルのフックになったり、初回の展開スピードが速まるといった効果があったという。
menu:LINE広告でオンラインデリバリーの認知向上へ
続いて紹介されたmenuは、今年4月からデリバリー業界へ参入し、本格的に動き始めているデリバリー&テイクアウトアプリ「menu(メニュー)」を運営する企業だ。「menu」は店舗、デリバリークルー、ユーザーをつなぐプラットフォームで、デリバリーとテイクアウトの両方で活用できる。「オンラインデリバリー」という市場は、新型コロナウイルスの流行前と比べて拡大しているものの、諸外国と比べ日本の利用率は圧倒的に低く、まずはマーケット自体の認知を引き上げる段階にあると、同社執行役員CFOの井上健氏は話す。
「そのための施策を去年と今年で展開してきましたが、現在は少しだけデリバリーの存在が認知されてきた段階です。市場をけん引し、フードデリバリー、テイクアウトの産業を日本に息づかせていきたいと考えています」(井上氏)
そこで、デリバリーの機能を追加したタイミングでテレビCMを展開し、そこからポスティングやクーポンを実施。現在は、LINEを中心としたWeb広告の配信を随時行っているという。
井上氏は「数字として結果を出すためには、様々なデータを活用することが必要。よりターゲットを詳細にし、LINEを通じて目的別のプロモーションができるようにしていきたいです」とビジョンを語った。
セッションの終盤には、富永氏がコロナ禍における各社のマーケティン注力課題を尋ね、データ活用の重要性を再確認した。富永氏は「LINEの強みは独自のIDを有していること。今後もデータ連携なども視野に、マーケティング成果を後押しするソリューションを目指していきます」と述べ、セッションを締めくくった。