ブランドを定義するための、3つの次元
知人であり友人の、事業構想大学院大学の岸波教授は、経営に必要なすべてのモノ・コトを、3つの次元に分類することを提唱しています。
(1)存在次元:自社の存在理由
(2)事業次元:自社の事業範囲の定義とその遂行に必要な戦略
(3)収益次元:自社収益を適正なものとするための諸活動
出典:『存在次元から事業次元への事業構想深化』(岸波宗洋、事業構想研究内の論文)
存在次元は自らの存在を明確に定義することですから、この点において他と混同する心配はいりません。一人ひとりがそれぞれ独自の存在であるように、企業も一社一社が独自の存在であることは明白です。したがって存在次元から思考を開始すると、カテゴライズの罠を避けることが可能になります。
そして、事業次元が明確となっていて、かつそれが社内に浸透している状態であれば、冒頭に書いた「同じカテゴリーと定義した他社を競合に設定し、競合の業績や取り組みに関する情報を入手し、自社の取り組みと照らし合わせ、一喜一憂したり、対応や改善を考えたりする」ような事象は起こらなくなります。
もし、同じ業種カテゴリーに属する競合他社の取り組みに一喜一憂するという事象が起きている場合、それは、存在次元でのブランド定義がなされていないケースがほとんどです。同じ業種カテゴリーと考えられる他社の情報に対して、事業次元もしくは収益次元で反応している状態、とみなすことができるということです。
あなたの所属する企業は、いかがでしょうか?
自らの存在を定義するためのブランド資産
コモディティ化とは、高付加価値を持っていた商品の市場価値が低下し、商品ごとの機能・品質などの属性とは無関係に経済価値を同質化すること。つまり、人間の脳の「同じようなものにする」という癖、それによるカテゴライズによって引き起こされるものであること。
そして、すべての企業はそもそも独自の存在であるにもかかわらず、そのことを忘れ、あるいは意識することなく、人間の脳の「同じようなものにする」という癖、それによるカテゴライズを前提に企業の様々な活動を定めていくことの不合理性を、この連載では述べてきました。
コモディティ化への処方せんを、改めてここに記します。
・存在次元では、すべての企業は「an apple」ではなく「the apple」である。
・「the apple」の状態をブランドと呼ぶ、したがってブランドとはすべての企業が活用すべき資産である。
・「the apple」の状態を定義することを、ブランドパーパスやブランドビジョンと言う。
・「the apple(パーパスやビジョン)」を前提に事業を構想し、消費者や社会へ価値を提供することで収益を得る、一連のプロセスをブランド開発と言う。
さあ、唯一無二の存在となり社会に必要とされるブランドを目指しましょう。そしてすべての企業が、自らにふさわしいブランドとなる世界になりますように。