“ユーザーのメディア化”で変わる、SNS担当者の役割
菅根:少し話はかわりますが、広い意味で「ファンの力ってやっぱり凄いなあ」と実感することがいくつかありまして。その一つが、この「カルピス」に関するツイートです。商品パッケージについてのつぶやきに40万いいね、11万リツイートと非常に大きな反響があって。社内でもSNSの担当はあるのですが、そういったものははるかに超えてしまいました。
今年もやってきたカルピスの限定イラスト本当この企画考えた人天才では……?? pic.twitter.com/UhAijiKo7t
— てんま (@uropenzetubou) July 19, 2020
徳力:すごいですね。このツイートは「天才では……?」という言葉選びが効いていますが、中の人にはこういうのはなかなか書けないですし、写真の撮り方も上手ですよね。ボトルを透かしてみると、裏側と絵が繋がって見えるわけですね。
菅根:今、「カルピスウォーター」は「放課後」をキーワードにしています。そのテーマを商品パッケージでもイラストで表現しています。液体が不透明な「カルピスウォーター」だからこそ、飲料を飲みおわったあとに表と裏のイラストが重なりを発見し楽しめるというアイデアでした。もちろんオウンドメディアでも訴求していますが、商品のタッチポイントに気づいた人が自主的に広めてくださったものが、もっとも拡散されたのです。
徳力:これがUGCの力だっていうことですね(笑)。こういうものも、ファンの人達にどうやって楽しんでもらおうという目線を積み重ねてきたからこそ、結果的に社内のデザインから出てきたアイデアだとも言えますか。
菅根:それはあると思います。パッケージデザインの担当したグループの人間も何度もファンミーティングや施策に参加したりしていますので。ただ、オウンドメディア担当は「普段私達がやっている投稿より、拡散されている~」と少し悔しがっていました(笑)。
徳力:(笑)。でも私は、この盛り上がりの一部は、オウンドメディアの手柄だと考えるべきだと思っています。というのも、オウンドメディアとユーザーの役割が今、ちょっと変わってきているように思うからです。
最近Twitterの中の人と話していて感じるのは、SNS担当者は広告発想に近くて、以前は「自分ががんばって相手に届ける」という面があったのですが、今はユーザーがみんなメディア化しているので、そちらで成果が出るように仕向けられればいいのではという気がして。ですから、ユーザーが単体で話題になったとしても、その一部は、公式アカウントが紹介済みの情報が貢献していると考えてもいいと思っています。
ファンを動かすというのは「他力」を大切にするということ
菅根:その通りですね。今回お話の準備をしながら思ったのは、「他力も重要」ってことなんです。自力だけでなく、他力。自分たちだけではどうしようもないことなのですよね。
徳力:できないです。ファンはファン自身の気持ちで動きますからね。
菅根:よく考えると、ブランドというのも、自分たちだけで作ったり、コントロールしたりできるものではない。今のブランディングというのは、「他力をちゃんと使う」必要がありますね。
今のように情報過多な時代は、宣伝部の宣伝だけでも無理ですし、コロナや災害のようなものが頻発していたら、数ヵ月かけて準備した施策があっても、一瞬で総崩れになってしまう時代です。他力を借りるというか引き出すというか、そういう観点を持つことが大切だと、より意識するようになりました。
徳力:本当にそうですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。