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「withファン」レポート

「N=1を大切に」Soup Stock Tokyo・スマイルズが掲げる、SNS運用3つのスタンス

 アジャイルメディア・ネットワークは、同社が提唱するアンバサダープログラムの一貫として、ファンと企業の関係に主軸を置いたオンラインセミナー「withファン」を主催している。2021年1月20日に行われた回では、元スープストックトーキョーSNSの「中の人」担当兼広報、現在はスマイルズ広報の花摘百江氏をゲストに、スープストックトーキョーのSNS運用におけるブランドコミュニケーションの在り方が語られた。また、「アンバサダーコンセプト型SNS公式アカウント運営」事業を立ち上げたアジャイルメディア出口氏とカラビナハート吉田氏もパネルとして参加し、企業SNSアカウント運用の悩みに答えた。

店頭からコーポレート全体の広報 兼 SNSの中の人へ

徳力:本日は花摘さんにプレゼンをしていただいたあと、質問を交えながらトークセッションという形にしたいと思います。まずは自己紹介からお願いします。

花摘:花摘百江と申します。私は現在、スマイルズというスープストックトーキョーの親会社の広報と、新たに立ち上げ中の「スマイルズ生活価値拡充研究所」の所長 兼 研究員として働いています。この研究所は、ひとことでいえば、企業やアカデミアと一緒に「生活の価値」について学術研究を行っていく場所です。

 2020年10月までは、スープストックトーキョーの広報でした。元々は、新卒でスマイルズに就職し、スープストックトーキョーの店頭に立ち1年働きました。その後、採用担当となり、スープストックトーキョーの分社化を経て、人材開発部に移ります。それと同時にスープストックトーキョーの広報も徐々に兼任するようになって、スープストックトーキョー史上では最年少で広報担当となり、企画編集ライティング、SNSの中の人などをやってきました。

株式会社スマイルズ広報 兼 スマイルズ⽣活価値拡充研究所 所⻑ 兼 研究員 花摘百江 (はなつみ・ももえ)氏
株式会社スマイルズ
広報 兼 スマイルズ⽣活価値拡充研究所 所⻑ 兼 研究員
花摘百江(はなつみ・ももえ)氏

徳力:SNS担当は、初代の方から引き継がれたそうですね。

花摘:はい、そうです。採用担当をしていた時に自分たちの会社を知ってほしくてFacebookで会社のことを頻繁に更新したり、採用サイトにも広報視点を取り入れたりしていたのですが、その働きをみて「広報や外へ伝えていく仕事が向いているんじゃないか」と声をかけてもらったのがきっかけでした。

 それでSNS一代目の方からバトンタッチし、そこからは創業当初より大切にしてきた「らしさ」がある広報活動やブランディングを目指して運用を進めてきました。広報兼SNS中の人という立場を活かして、企画から実行までを営業部などと共に推進していくこともでき、「アートスープ」や、カレーしか売らない「カレーストックトーキョー」など、様々な企画の立案からSNS運用までを一貫して行ってきました。

ブランドコミュニケーションにおける3つのスタンス

徳力:広報やSNS担当として外部に向けたコミュニケーションを行う際、どのようなことを意識されていますか?

花摘:これは、スマイルズとスープストックトーキョー両方に共通しているのですが、「世の中のなんでこうなっちゃうの?」に着目し、「私たちも生活者。N=1を大切にする」という2つを常に意識しています。

 N=1というのは、一般的にマーケティングでは母数となるNは大きなほうがいいと考えるところをあえて特定の一人の意思を深堀していくことをいいます。N=1の対象は、ペルソナというよりは、生活者であり、スープストックトーキョーの利用者である「自分自身」というイメージのほうが近いです。

花摘:これを踏まえた上で、わたし達が企業やブランドとしてコミュニケーションする際のスタンスについてお伝えしたいと思います。

ブランドは人である

花摘:1つ目は、「ブランドは人である」ということです。よく、ブランドマネジメントは、コンセプトや禁止事項、枠組み、施策といったもので成り立っているケースがあると思いますが、スマイルズでは「ブランドが人だったらどうする?」というスタンスで考え、行動します。

 SNSを例にすれば、「スープストックさんが人だったらどういうふうに、どんなことを、何時くらいに話すかしら?」というふうに考えてつぶやきの内容が決まっていきます。一人の人格として考え、それを判断基準にしていて、トキメキに繋がっているか、ということを重要視します。

過ぎないコミュニケーション

花摘:2つ目は「過ぎないコミュニケーション」。これは、たとえば可愛すぎない、熱すぎない、クールすぎない等々何かにつけ、過ぎないようにするということです。これは下手したら「ふつうにしているってこと?」となりますが、そうではないんです。過ぎないことによって、相手とほどよい距離感と、一緒に過ごす心地よさを作り出すために重要なんです。

一発百中でなく、百発一中でいい

花摘:3つ目は「一発百中でなく、百発一中でいい」ということ。SNSでのコミュニケーションやコピーライティングを行うときに気をつけていることですが、一発で言おうとすると過剰になったり、無理が出たり、大げさになってしまう。私たちは食品を扱っていますので、絶対食べて欲しいからといって誇張表現をしてしまうと、お客様に対して不誠実になってしまうこともあります。

マジックワードだけを並べた、さもありなんといったコトバより、ピンポイントで“誰か”だけには確実に届く具体的な一言を連ねていくことのほうが可能性があると思うのです」

 これは、上司・野崎の書いた書籍「自分が欲しいものだけ創る! スープストックトーキョーを生んだ『直感と共感』のスマイルズ流マーケティング」のなかの一節で、私は本当にそうだな、と思って引用させてもらいました。

 SNSの中の人には、「バズらせる」ということが要請としてもあると思います。たとえばまわりから「バズらせてほしい」といったオーダーがあったり、自身でそういった義務感があったり。「当てなくちゃいけない」という気持ちがあると、それがトラブルのもとになったり、表現が不誠実になりやすい危険があると実感しています。あるいはN=1でなく、みんなのためのコトバになることも、それは本来目指すところと違ってしまい、やはりトラブルの原因になると考えています。

 だから「一人に向け、一回でなく百回かかってもいいから伝わるようにしていく」ということを弊社は独自に考えてきました。

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この記事の著者

吉田 朗子(ヨシダ サエコ)

アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 マーケティング部広告代理店とカナダでのワーキングホリデーを経て、2018年アジャイルメディア・ネットワーク(AMN)入社。AMNでは、マーケティング部に所属しながら”寄り添う企業として”をスローガンにしウェビナー、イベントなどを開催中。個人では保護犬のボランティアなどを行いながらより良い未来を模索している。アンバサダープログラム事業部:https://agilemedia.jp/ambassador-program

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

宮崎 綾子(ミヤザキ アヤコ)

編集者。編集プロダクション勤務を経て2009年に独立、“ひとり編プロ”アマルゴンを運営。PC・スマホ・ウェブ関連の技術&カルチャー書籍編集制作を中心に、PRコンテンツ企画など幅広く関わる。電子書籍の導入期にはImpress QuickBooksシリーズに参画。実績は https://amargon.net

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田口 和裕(タグチ カズヒロ)

タイ在住のフリーライター。ウェブサイト制作会社から2003年に独立。雑誌、書籍、ウェブサイトなどを中心に、ソーシャルメディア、クラウドサービス、スマートフォンなどのコンシューマー向け記事や、企業向けアプリケーションの導入事例といったエンタープライズ系記事など、IT全般を対象に幅広く執筆。著書に『できるfit メルカリ&LINE&Instagram&Facebook&Twitter 基本+活用ワザ』(インプレス・共著)、『ゼロからはじめるテレワーク実践ガイド ツールとア...

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MarkeZine(マーケジン)
2021/05/21 08:00 https://markezine.jp/article/detail/35818

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