「兆しFu-manさん図鑑」第1回・第2回はこちらから!
オンライン接客サービスの導入により、見えてきたCX向上のヒント
新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の感染拡大で外出自粛要請が出されたことで、コミュニケーションアプリやチャットボット、テレビ会議システムを通じて接客を行う、いわゆる“オンライン接客サービス”を提供する企業が急速に増えています。
オンライン接客サービスの導入はアパレルだけでなく、高級宝飾品、不動産、保険、自動車など、多岐にわたっています。居住地域や時間に縛られないことから、潜在顧客を拡大する起爆剤としても注目されており、コロナ収束後も導入企業はますます増加することが予想されます。そんな時代の過渡期にある中、どのような顧客体験(以下、CX)向上のヒントがあるのでしょうか? 「オンライン接客にまつわる不満意識」を調査し、ラボが注目した3タイプのFu-manさんをご紹介します。
昨今のコロナ禍の影響による新生活様式への移行にともない急激に噴出した人々の不満を、類型化・キャラクター化した「不満を抱える人タイプ」のこと。ラボでは、新たなCX発想のヒントとなるようなFu-manさんの調査活動を随時行っています。
ファッション業界など「思わぬ商品との出会い」に商機
最初にご紹介するのは、ショッピングの醍醐味の1つである“ワクワク感”の乏しさを感じ、どこか満ち足りないFu-manさんです。
「店舗だと、思わず気に入ることもあるが、そのワクワクがオンライン接客では物足りない」「実物を目の前にしてワクワクする時間がない」「店員の制服、店内の香り、お店の雰囲気を味わいながら購入して、最後に袋を手渡ししてもらうまでが楽しかったが、それがない」など、オンライン接客における“ワクワク感のなさ”を不満視する声が散見されました。さらには「買った満足感が少ない」という声もありました。
デバイス越しで視界が固定的な分、予期せぬ商品との“偶然の出会い”や“思わぬ一目惚れ”という体験は、オンライン接客ではなかなか叶いません。また、利用シーンをシミュレーションするワクワクタイムも、刺激情報の少なさもあってイマイチ盛り上がりに欠けることも。さらに画面越しに対応スタッフが常時いては、気ままに没頭することも難しく、ブランドの世界観を五感で満喫する楽しさも、オンラインでは視覚・聴覚にとどまります。
ショッピングとは単にものを買うだけの体験ではありません。そのプロセスにある“ワクワク”を含めて1つの買い物体験であり、そのプロセスこそが1回の体験の満足度を大きく左右と言えます。
そんなFu-manさんは、幅広い年代の男女全般で見られ、特にファッション・美容品・宝飾品・インテリアでオンライン接客を経験した人たちに、強く出る傾向にありました。オンラインショッピングとしての利便性・快適性の追求も重要な一方で、販売カテゴリーによっては、“ワクワクできるオンライン接客体験”の提供が、重要なテーマになってきそうです。
新たなCX発想のヒント
重要なのは、単なるリアル体験との比較論に陥らない、オンラインショッピングならではの“ワクワクのさせ方”をどう創っていくか? ということではないでしょうか。たとえば、接客の最中で、顧客が発言したキーワードからレコメンドアイテムが画面に続々と表示されたり、事前に自分が所有するワードローブやチャレンジしたいスタイルを登録しておくと、おすすめのコーディネートパターンがリアル店舗以上に一気に数多く画面上に表示され、偶発的な出会いが増えたりするなど、テクノロジーの力を借りながら、オンラインショッピングだからこそ叶えられる”ワクワク体験”の設計に、勝機があるのかもしれません。