転職・保険業界に多発 おもてなしのオンライン化に課題
最後は、オンライン接客時に日本の十八番とも言えるホスピタリティが感じられなかったことに、やっぱり満足がいかないFu-manさんです。

「一方的にプレゼンをされている感じがする」「事務的で、画一的な接客に感じる」「困っていてもマニュアル通りと思われる対応しか受けられなかった」など、接客スタッフの対応が機械的に映り、不満を感じる声が見受けられました。また、「対応スタッフの表情がくみ取りにくい」「営業の熱意が伝わりにくかった」など、“人間味”の伝わりにくさを指摘する声も見られました。
表情の機微や視線から顧客の関心・ニーズを察知し、半歩先の提案をする。そんな高度なホスピタリティに慣れてしまっていますが、オンラインでそれを実現させるのは現時点では難しい状況です。事実、「オンライン接客は、対面接客以上に相手の表情や相手の意図をくみ取る力が、従業員側に必要だと思った」と、リアル以上に、顧客のニーズや関心に対する察知力を高めることを期待する声も見られました。
そんなFu-manさんは30代以上の男女に、多く見られました。特に、“説明”を受けるようなカテゴリー(転職・保険)でオンライン接客を経験した人からの声が目立ちました。
一方でストレスを溜めているのは顧客だけではありせん。接客する側も、“提供しなければならない”と考えるサービスレベルの基準が高いことが、日本の特徴です。
“お客様が特に言葉にせずとも、ニーズを察知してくみ取る”。そんなおもてなしのあるべき姿がありながらも、オンライン接客にはまだまだ不慣れなこと、システムの環境整備が途上なこともあって、オンラインではどうしてもリアルではできていた接客パフォーマンスを発揮できず、満足の声を得られにくい現状にフラストレーションを溜めているようです。
第2回の記事でも触れたように、“従業員体験”(Employee Experience=EX)の向上の重要性が唱えられる昨今。顧客に対してだけでなく、従業員に対しても最大のパフォーマンスを発揮できるようなオンライン接客環境を整備していくことも非常に重要です。
企業がオンライン接客を導入する際は、顧客へのフォローはもちろん、接客スタッフが理想のおもてなし・サービスをオンライン上でも発揮できるよう、システムの整備やスタッフ教育の中でアシストすることが、最終的には、CXを向上させることにつながるのではないでしょうか。
おもてなし大国・日本として、オンライン接客においても、世界トップクラスの接客を目指すためには、まだまだ様々なポイントで改善の余地がありそうです。
新たなCX発想のヒント
オンライン接客における新たなおもてなしスタイルをどう築くか? が重要です。たとえば、顧客の迷い・悩み・違和感など、顧客が言葉で伝えにくい部類の感情を、カメラが読み取り、従業員画面でポップアップ解説されるといった支援策も、オンライン接客ならではの仕様になるかもしれません。また、今回の調査からは、オンライン接客前の事前ヒアリングや、オンライン接客が終了後に浮上した疑問や質問にも対応を希望する声も見られました。オンライン接客“中”だけでなく、一連のカスタマージャーニーと捉え、顧客・従業員双方の体験を設計する視点がカギとなりそうです。
ご紹介した3タイプのFu-manさんの中に、心当たりのタイプはありましたか? オンラインショッピングにおいて今後も様々なサービスが展開される中で、次なるCX開発のヒントとなるような新たなFu-manさんが続々と出現していきそうです。Fu-man insight labでは、これからも引き続きFu-manさんの調査・観察活動を続けてまいります。