※本記事は、2020年10月25日刊行の定期誌『MarkeZine』58号に掲載したものです。
株式会社才流 代表取締役 栗原 康太氏
1988年生まれ、東京大学文学部行動文化学科社会心理学専修課程卒業。2011年にIT系上場企業に入社し、BtoBマーケティング支援事業を立ち上げ。事業部長、経営会議メンバーを歴任。2016年に「才能を流通させる」をミッションに掲げ、経営者・事業責任者の想いの実現を加速させる才流を設立し、代表取締役に就任。アドテック東京などのカンファレンスでの登壇、宣伝会議・広報会議など主要業界紙での執筆、取材実績多数。
Q1.最近、いちばん感銘を受けた書籍とその理由は?
『仕事に追われない仕事術』です。
本書は今までのタスク管理の主流だった「すぐやる」方法とは真逆の、メールや電話、書類は翌日に処理しよう、という主張のタスク管理本です。要は、膨張するばかりのタスクリストではなく、日毎に容量が決まったクローズドなタスクリストを作成してそれを管理しよう。そのためにメールや電話、書類は翌日以降に処理するルールにしよう、という話です。マーケターにとっては、全体戦略の立案やキャンペーンの企画、コンテンツ作成など、まとまった時間を要する仕事こそが成果に大きな影響を及ぼします。そうした重要な時間を確保するためにも、自分の仕事やタスクをどう効果的にマネジメントするか、は全マーケターが常に向き合うべき問いの1つでしょう。
私は、10年以上前からタスク管理の元祖とも言える“Getting Things Done”の思想に則り、2分以内に対応できるメールやチャットへは即レスを心がけていました。しかし、最近はチャットへのレスで一日が終わってしまい、本来の仕事が進まないことに強いストレスを感じていました。そんな時、たまたまTwitterで流れてきたこの本を読み、経年劣化気味だった自分のタスク管理システムを再構築したのです。Slackやメールへの対応に追われていて、本来予定していた仕事が進まない……そうしたお悩みをお持ちのマーケターは本書を手に取ると仕事の進め方に関するなんらかの気づきを得られるかもしれません。
Q2.「マーケターならこれを読むべし!」という書籍とその理由は?
『リーン・スタートアップ』はスタートアップや新規事業の領域では必読書の筆頭ですが、マーケターにとっても必読の一冊です。
新規事業立ち上げの方法論を解説した本で、緻密な要件定義や事業計画に基づいた新製品のリリースではなく、顧客にインタビューしたり、試作品を提供して反応を見たりするなど、「顧客からのフィードバック」による検証と学びに基づいた事業立ち上げの重要性を説いた本です。この「顧客からのフィードバックに基づいた検証と学習のプロセス」はマーケターにも必要な行動原則で、会議で長い時間をかけて話したり、データダッシュボードを見たりするだけでなく、顧客へのインタビューを通じて、実行したキャンペーンや発信したコンテンツに対するフィードバックを得て自社のマーケティング活動を最適化していくことが重要です。
しかし、ほとんどのマーケターは顧客に会わず、アウトプットに対する顧客からのフィードバックも得ずに仕事を進めています。天才的な勘とセンスを持ったマーケターであれば、それでも良いかもしれませんが、数ヵ月の準備や施策実行の末に「まったく反応がなかった……」と手痛い失敗をするケースが多いでしょう。
『書を捨てよ、町へ出よう』(角川書店)という寺山修司の本があります。マーケターが『リーン・スタートアップ』から学べることを要約すると、「オフィスを出て、顧客に会おう」ということです。その活動に必要なエッセンスや手順を学べる本として、本書を強く推薦します。