解説コラム:マーケティング活動に必須な「WHY」を突き詰めるストーリー
世界有数の国際的広告賞であるカンヌライオンズでは、2015年に人種差別や性差別などの撤廃に貢献するクリエイティブを評価する「Glass」部門が、そして2019年には「SDGs」部門が新設されるなど、プロモーションと何らかの社会課題解決を結び付ける、いわゆる「ソーシャルグッド」な活動が大きな注目を集めています。
賛否両論はありますが、もはや一過性のブームとは呼べないほど、近年はマーケティングコミュニケーションの世界とSDGsに代表される社会課題解決の世界が接近していると言えるでしょう。同様に「ブランドパーパス」という言葉も、マーケティングの世界で日々、重要さを増しているように思います。
ブランドの「大義」や「存在意義」として使われることが多いこの概念は、生活者の価値観が多様化する現代において、「なぜこのブランド(企業・製品)が世の中に必要なのか」を、顧客、生活者に示すことのみならず、企業内外でブランドに関わる人すべての意識、思いをひとつにするためにも欠かせない要素です。ブランドの「パーパス」を突き詰めることは「なぜこのブランドが世の中に必要なのか」というルーツを見つめなおすことであり、まさにマーケティング活動に必須な「WHY」を突き詰めること、そのブランドはどこから来て、どこに行くのか、どのような社会を実現したいのかということを、世の中に示すことになるからでしょう。
この「パーパス」に基づき、誰もが納得できるものでなければ、いくら表面的に「ソーシャルグッド」を装ったとしても、誰の心にも響くことはない、形だけの空しいマーケティング活動となってしまいます。
この連載は「みらい製菓」というお菓子会社で、「社長の肝煎りとして未来を拓くための新規事業を考えるチームが発足した」というところから始まりました。この新規事業立案に際してはなんの制約条件もなく、何をやってもいいという状況です。
読者の皆さんも、とくに社会環境の変化が顕著な昨今では、このようなプロジェクトにアサインされることが増えてきているのではないでしょうか? 既存事業の延長線上にはないものを考えるとき、何を拠り所にすればいいのでしょうか。業種にもよりますが、単純にデジタル化やAI活用のようなトレンドにただ乗っかるというのは、おそらくちょっと安易すぎるでしょう。
では何から始めるべきなのでしょうか? 登場人物である「みらい製菓」新規事業プロジェクトメンバーは、企業の「WHY」、なぜ自分たちはここにいて、何を目指し、どこに行こうとしているのか、その「パーパス」を起点にしようと思い至りました。今後、登場人物たちが時には悩み、壁にぶつかりながらも考え、成長していく姿を描いていきたいと思います。
続く第二話「ソーシャルグッドと事業の両立は可能か?/第2話【マンガで学ぶ:SDGs・ブランドパーパス】」はこちら!